問題 6-11 の解答例

Feynman-Hibbs cover

Problem 6-11
Suppose the diatomic molecules are oriented in a random fashion. Show that the electron scattering averaged over a group of such molecules is proportional to

fA2+fB2+2fAfBsinqd/qd/

How can this result be generalized to the case of polyatomic molecules?


(解答例) ランダムに配向した一群の分子による電子散乱の平均をとるには, 運動量移行 q の方向を極座標系の z 方向とした全立体角について, 問題 6-10 で得られた量 |K(1)|2 の平均を求めてやればよい.従って,

|K(1)|2=14π|K(1)|2dΩ=14π02πdϕ0πsinθdθ|K(1)|2=120π{fA2+fB2+2fAfBcos(qdcosθ)}sinθdθ=12(fA2+fB2)0πsinθdθ+fAfB0πcos(qdcosθ)sinθdθ(1)=fA2+fB2+fAfB0πcos(qdcosθ)sinθdθ

このとき 第 3 項の積分は, 変数変換 cosθ=x とするならば,
0πcos(qdcosθ)sinθdθ=11cos(qdx)dx=[1qd/sin(qdx)]11(2)=2sin(qd/)qd/

よって式 (1) は次となる:
|K(1)|2=fA2+fB2+fAfB×2sin(qd/)qd/(3)=fA2+fB2+2fAfBsin(qd/)qd/

この結果を一般化して n 個の原子からなる分子の場合を考える.まず式 (6-57) に相当する式は rj=rj として次となる:
(4)K(1)=j=1neiqrj/

また問題 6-10 の 2 原子分子の場合の結果は次であった:
(5)|K(1)|2=fA2+fB2+2fAfBcos(qd/)

この式の形から類推して, それを n 個の場合に一般化した式は次のような形になるであろう:
|K(1)|2=|j=1neiqrj/|2=(j=1neiqrj/)×(k=1neiqrk/)(6)=j=1nfj2+2j=1n1k>jfjfkcosq(rjrk)

従って, この式 (6) と式 (5) との比較から, 式 (3) を一般化したものは次となることは明らかであろう:
(7)|K(1)|2=j=1nfj2+2j=1n1k>jfjfksin(qdjk/)qdjk/

ただし djk=|rjrk| である.