問題 7-16 の解答例

Feynman-Hibbs cover

Problem 7-16
Show that

(7-98)χ|xlmxk+1xkε|ψ=dxdyχ(x,t)xK(x,t;y,s)iyψ(y,s)

if tl=t and tk=s, provided tl>tk. What happens if tl<tk ?


( 解答 ) 式 (7-72) により,「(m/ε)(xk+1xk) は時刻 tk=s に於ける運動量 pk である」.

(1)pk=mxk+1xkε

式 (7-96) の次に書かれている一般的規則:

時間が連続していることに相当する一連の量の遷移要素について, その積分的な定義を書くには, それらに相当する演算子を元の遷移要素の時間順序に従って右から左へ書いて行く.もしそれらの間に有限な時間間隔 Δt が存在するならば, 核 K またはその代わりに演算子 e(i/)LΔt を挿入しなければならない.2つの連続する量の間の時間間隔 ε がゼロに漸近するとき, 核 K はディラックのデルタ関数に漸近し, この規則は終息する.

に従うならば, 以下のようになるであろう.
まず tl>tk の場合では, 物理量の順序は xlpk となる.従って,
χ|xlm(xk+1xk)ε|ψ=χ|xlpk|ψ=χ|xl(dxl|xlxl|)(dxk|xkxk|)pk|ψ=dxldxkχ|xlxlxl|xkpkxk|ψ=dxdyχ(x,t)xK(x,t;y,s)p(s)ψ(y,s)(2)=dxdyχ(x,t)xK(x,t;y,s)iyψ(y,s)
次に tl<tk の場合を考える.xlpk に於いて,「xlpk は, 時間が同一ではないので, これらは交換可能である!」ことに注意する.よって, 一般規則から xlpk を時間順序に従って pkxl とし, その遷移要素をとれば次となる:
χ|pkxl|ψ=χ|m(xk+1xk)εxl|ψ=χ|pk(dxk|xkxk|)(dxl|xlxl|)xl|ψ=dxkdxlχ|xkpkxk|xlxlxl|ψ=dxdyχ(x,s)p(s)K(x,s;y,t)y(t)ψ(y,t)(3)=dxdyχ(x,s)(ix)K(x,s;y,t)yψ(y,t)

【 独り言 】 「量子力学では電子の座標と速度は同時に正確に測定することが出来ない量, すなわち同時に確定した値を持つことが出来ない量である.電子の座標と速度は同時には存在することのない量であると言うことが出来る.」(ランダウ量子力学より).
では,「時間が同一でない位置と運動量とは交換可能である」とは, どういうことであろうか?.
これは,「逆に2つの観測量が可換であると, それらは共に正確な測定が出来る」のだから, ある時刻 ta に系(例えば粒子)の位置 xa を観測し, その後の時刻 tb に系の運動量pb を観測した場合, xapb は共に正確な値として得ることが出来る.そして「可換」なのだがら, 今度は最初に系の運動量pa を観測し, それから少し経った後でその位置 xb を観測したとしても, もやはり何方も正確な値が得られるということであろう!?.