式 (9-71) 導出の試み

問題 9-10 にも関係する式 (9-71) は, どのようにして得られたのであろうか?. 自分で納得できるような導出は行えなかった. 以下に示すのは, 本文の指示に従って「無理にこじつける」ことで得た導出である.

Feynman-Hibbs-cover


まずは, 式 (9-71) の前書き (前ブログの問題文に示した) を翻訳すると,

エネルギー補正 電磁気学的エネルギーの補正 δE を検討するために, 「物質系は移動電荷を1つだけ持つ」という最も単純な場合(例えば, 無限に重い原子核を持つ水素原子や, 空っぽの空間にある自由電子)を考えることにし, その座標を R とする.従って,

(1)jk=eR˙eikR=epmeikR,|jk|2=jkjk=empeikRemeikRp=e2m2p2

この場合 jkR˙ を含むことになり, そして 2次の項を考えるには, 7-3節で述べたように, 適切な注意が必要である.すなわち速度二乗項 R˙2 からの付加項が δE に追加されるのである.7-5節のように R˙ を運動量演算子 p で表わすと, 次の式が得られる:
δE1=e2m2Nd3k(2π)32πkc(|(p1eikR)NM|2+|(p2eikR)NM|2)1EMENkc(9-71)+e2md3k(2π)32πkc

この前書きから, 7-3節の議論を用いるべきであると推量される.最も関係する式は次の式 (7-54) 及び式 (7-99) であろう:

(7-54)m2(xk+1xkε)(xkxk1ε)=m2(xk+1xkε)2+2iε1

『運動量の2乗 p2pp, すなわち2つの「連続する速度」(successive velocities) に質量を掛け合わせたものに対応する』ことに注意する.これは1つの時刻に於ける速度の単純な2乗 m2(xk+1xk)2/ε2 には相当しない.なぜなら, § 7-3 , 特に式 (7-49) で見たように, ε0 のときそれは m/iε として無限大に発散してしまうからである:
(7-49)((xk+1xk)ε)2=imε1=imε1asε0

この表現式 m/iε と式 (7-97) の左辺(運動量の2乗 p2 に相当する)との差は, ε0 の極限では実際に p2 となる?? [1]ここの文章は意味が理解できない.少しおかしいように思われた.式 (7-99) の右辺は 型の不定形の極限となっており, … Continue reading 』. すなわち,
(7-99)χ|mxk+1xkεmxkxk1ε|ψ=χ|m2(xk+1xk)2ε2|ψ+miεχ|1|ψ

この場合に上記のことを用いるとするならば, あまり納得しないけれども, N=M の場合の行列要素に適用するべきなのであろうと推察し, 次として見よう:
(2)p2=pM2+miε1,pM2=p2miε1

従って, |(j1k)MM|2+|(j2k)MM|2 はおよそ次のように書くことが出来るであろう:
|(j1k)MM|2+|(j2k)MM|2=e2m2|pM2|=e2m2|p2miε1|(3)e2m2{|p2|mΔt}

そして式 (9-69) に於いて N=M の場合を抜き出して書き, それに式 (1) を当てはめてみると,
δE=NMd3k(2π)32πkc(|(j1k)NM|2+|(j2k)NM|2)P.P.(1ENEMkc)+d3k(2π)32πkce2m2(pM2)MMP.P.(1EMEMkc)=NMd3k(2π)32πkce2m2(|(p1eikR)NM|2+|(p2eikR)NM|2)1EMENkc(4)+d3k(2π)32πkce2m2(pM2)MM(1kc)

この右辺第2項は, 式 (3) を当てはめることで次のように書ける:
d3k(2π)32πkce2m2(pM2)MM(1kc)=d3k(2π)32πkce2m2{|p2|mΔt}(1kc)=d3k(2π)32πkce2m2(p2)MM(1kc)+d3k(2π)32πkce2m2mΔt(1kc)(5)=d3k(2π)32πkc{|(j1k)MM|2+|(j2k)MM}(1EMEMkc)+d3k(2π)32πkce2mΔt(1kc)

この式 (5) を元の式 (4) に代入する.第1項目は和 NM の方へ含ませてしまうならば,
δE=Nd3k(2π)32πkce2m2(|(p1eikR)NM|2+|(p2eikR)NM|2)(1ENEMkc)(6)+e2md3k(2π)32πkcΔt(1kc)

ここで, 式 (9-69) に於ける光子の放射と吸収の過程は「実光子(actual photon)」の放射や吸収とは異なったもので, 一般にエネルギー保存を満たさないことに注意する.そのような光子は「仮想光子(virtual photon) 」と呼ばれる.
『エネルギー保存の制約から離れて, あらゆる可能な運動量と偏極を持つ「仮想光子」を放射したり吸収したりすることに付随する相互作用エネルギーが, エネルギーシフトの実部 δE を生ずるのである』.
従って, 式 (6) の最後の項中の量 kc は, 仮想光子のエネルギー ΔE=ω=kc と見做せる.そして, エネルギー保存則を満たさないのであるから, 次の式を満たすような仮想光子を考えることが許されるであろう:
(7)ΔtΔE=

これを式 (6) の第2項に用いるならば,
(8)e2md3k(2π)32πkcΔtΔE=e2md3k(2π)32πkc=e2md3k(2π)32πkc

従って, エネルギーシフトの実部 δE の式 (6) は式 (9-71) のようになる:
δE=e2m2Nd3k(2π)32πkc(|(p1eikR)NM|2+|(p2eikR)NM|2)1EMENkc(9-71)+e2md3k(2π)32πkc

References

References
1 ここの文章は意味が理解できない.少しおかしいように思われた.式 (7-99) の右辺は 型の不定形の極限となっており, それが運動量の2乗 p2 に相当するのであろう:
p2=χ|mxk+1xkεmxkxk1ε|ψ=χ|m2(xk+1xk)2ε2|ψimεχ|1|ψ=( ε0 )