自由粒子のディラック方程式解
Thirteenth Lecture
自由粒子の波動関数に対する解を求める際には
第 10 講の定義
そしてディラック方程式は次のように書くことが出来る:
(このとき,「量
確率密度とカレント(確率流束密度)を 4次元的な形に表現すること(put into) が必要である.特定な表現においては, 確率密度とカレントは次で与えられる:
「標準表現」(Standard Representation)に於ける
であるならば, [2]
これを証明するには
【 問題 】(1)
(2) 式 (13-1) と式 (13-3) から,「確率密度保存」の式
が成り立つことを示せ.(第 10 講の問題も参照のこと).
〈解答例〉(1) まず, ディラック方程式 (13-1) のエルミート共役を考える.
となることに注意すると,
この両辺に右から
を利用することで,「随伴方程式」(13-3) が得られる:
従って,
(2) 式 (13-1) に左から随伴スピノル
他方, 随伴方程式 (13-3)
に, 右から
(5) – (6) の減算を行うと,
従って,
上式の
従って, 次の「連続の方程式」すなわち「確率密度保存則」が示されたことになる:
一般に, 演算子
次の特性は, 非相対論的量子力学に於いて非常に有用な性質である「エルミート性」
自由粒子の場合, ポテンシャルは存在しない.従って
これを解くために, 解として次式を試してみよう:
従って
よって, 式 (13-5) は次となる:
従って,「
この条件下では
従って
よって 式 (13-7) を成分で表すならば次となる:
比
すなわち, 次の条件が必要である:
この「条件」は驚くことではない.この条件が述べているのは「
同様にして, 式 (13-9b) と式 (13-9c) は
これもやはり条件(13-10)となる.
同じ条件を正確に得られるもっとエレガントなやり方は, 直接に式 (13-7):
式(10-13):
従って, 条件は次となる:
前者は前に得られたものと同じである.そして後者は (波動関数でない)自明な解に過ぎない.
自由粒子のディラック方程式には, 線型独立な2つの解が存在することは明らかである.それは, 仮定した解をディラック方程式に代入すると
ただし次の記法が用いられている:
これらの解は規格化されない.
運動している電子のスピン定義(DEFINITION OF THE SPIN OF A MOVING ELECTRON)
2つの線形独立な解とは何を意味しているのであろうか?.それは, 更に特定することが可能な「ある物理量」が存在することであるに違いない.それは波動関数を一意的に(uniquely) 決定するであろう.例えば, 粒子が定常状態となる座標系に於いては, スピンの向きに2つの可能性がある.数学的に言えば,「固有値方程式
これら2つの反交換する演算子を組み合わせた
そして次に必要なのは, 演算子
可能な
すなわち,
もし
粒子が静止している系では
従って
粒子が
となる.第 10 講義で導出された関係を用いるならば, これは静止している粒子(stationary particle) の場合, [4]静止している粒子(stationary particle)の場合
となる.この選択により
【 問題 】式 (13-11) の波動関数の最初は
〈解答例〉最初の
また2番目の
以上から, 最初の
自由電子の波動関数を得る別の方法は, 式 (10-16) のような波動関数の同値変換
ただし規格化は, 後の式 (13-14):
式 (10-15) から, 同値変換子
また, 式 (10.14) と同様にして次も言える:
すると双曲線関数の公式
すると式 (B) の
従って, 式 (A) は
ここで
静止している電子の場合
すなわち,
と書くことが出来る.この
に対する解であるのは明らかである.なぜなら, これにより式 (13-11) が成り立つからである:
波動関数の規格化(NORMALIZATION OF THE WAVE FUNCTION)
非相対論的量子力学の場合, 平面波は
しかしながら (4元カレントの第 0 成分は
によって規格化できるであろう.比例定数の
従って,
ただし
同じ結果が
同様にして, 以下の式が真であることを示すことが可能である:
全ての
表 13-1.
Matrix N | |||||
【注意1】ただし, 量
【注意2】(訳註) ガンマ行列の表現を変えたため, 原書の算出結果を大分修正したので注意するべし.また原書では「第 5 列目は, 第3列目 (
【極限の場合】粒子
References
↑1 | [ブログ註] 微分 「場の量を と書く.下付き添字をコンマの後ろに書いたら, それは常にこの種の微分を表すものとする.添字 左辺の分母にある上付きの そのバランスを納得するには, 点 起こる で与えられることを見ればよい」 |
---|---|
↑2 | 標準表現に於いては次となる: 「行ベクトル」となる.随伴スピノル |
↑3 | [ブログ註] 原書では |
↑4 | 静止している粒子(stationary particle)の場合 従って,次となるからである: |
↑5 | [ブログ註] 従って, この時の (ハルツェン=マーチンより) 演算子 ヘリシティー演算子 である.この場合に考えているのは |
↑6 | [ブログ註] 同値変換子 すると, 式 (10-15) と同様にして次式が言える: これはちょうど, 式 (10-21) の「ローレンツ変換」の逆変換の式になっている: |
↑7 | [ブログ註] |
↑8 | [ブログ註] § 3.5 より,「確率密度」 連続方程式 |