問題 6-18 の解答例


Feynman-Hibbs cover

Problem 6-18

Derive and interpret the integral equation

(6-75)λmn(t2,t1)=δmneiEm(t2t1)/it1t2dt3eiEm(t2t3)/kVmk(t3)λkn(t3,t1)


(解答) 式 (6-17) の KV は式 (6-19) のように書くことが出来るのであった:

(6.19)KV(b,a)=K0(b,a)idτcK0(b,c)V(c)KV(c,a)

この式 (6-19) の持つ物理的意味は § 6.2 に次のように記述されている :
a から b への系の遷移に対する全振幅は, 散乱の数がいくらあっても2つの選択肢の和で表される. 1つの選択肢は散乱なしに遷移が起こる振幅であり K0 と表される. 2番目の選択肢は1つ以上の散乱によって遷移が起こる振幅であり, 式(6-19)の第2項で表される. この第2項の点 c は最後の散乱が起こった点であると考えることが出来る. ポテンシャル場の中で系は a から c へ運動するが, その運動は KV(c,a) によって厳密に記述される. そして点 c において最後の散乱が起こり,その後系は自由な系として(散乱を受けないで)点 b に到る. この運動は K0 によって表される」.
そして, この解釈は本文の図6-3 に示されている :

Feynman-fig6-3

図 6-3. (1) では, 粒子は自由粒子としてポテンシャルを通過して a から b まで動く. この振幅は K0(b,a) である. (2)では, 粒子は V によって1回以上散乱される. 最後の散乱は c で起こる. a から c への運動は KV(c,a) によって記述され, c から b への運動は K0(b,c) によって記述される. c のあらゆる位置が考慮されるときに, (1) と (2) の状況を組み合わせたものは, あらゆる可能な場合を尽くすことになり, KV(b,a) は式(6.19)の形で与えられる.

このとき, 自由粒子核を KU とするならば上式は次のように表せる:

(1)KV(2,1)=KU(2,1)idx3t1t2dt3KU(2,3)V(3)KV(3,1)

この式 (1) で, 自由粒子核 KU を式 (6-66) の形に, そして KV(3,1) に式 (6-68) の形を用いる :
(6-66)KU(2,1)=nϕn(x2)ϕn(x1)eiEn(t2t1)/,KU(2,3)=mϕm(x2)ϕm(x3)eiEm(t2t3)/,(6-68)KV(3,1)=nkλkn(t3,t1)ϕk(x3)ϕn(x1)

すると, 式 (1) は Vmk の定義式 (6-71) も用いることで次のように書くことが出来る :
KV(2,1)=nϕn(x2)ϕn(x1)eiEn(t2t1)/idx3t1t2dt3mϕm(x2)ϕm(x3)eiEm(t2t3)/V(3)nkλkn(t3,t1)ϕk(x3)ϕn(x1)=nmδmneiEm(t2t1)/ϕm(x2)ϕn(x1)imnt1t2dt3eiEm(t2t3)/kdx3ϕm(x3)V(3)ϕk(x3)Vmk(t3)λkn(t3,t1)ϕm(x2)ϕn(x1)(2)=nm{δmneiEm(t2t1)/it1t2dt3eiEm(t2t3)/kVmk(t3)λkn(t3,t1)}ϕm(x2)ϕn(x1)(3)nmλmn(t2,t1)ϕm(x2)ϕn(x1)

このとき, 前段の式(2)の { } 中が, 最終式(3)の λmn(t2,t1) であることは明らかである. よって,
(3)λmn(t2,t1)=δmneiEm(t2t1)/it1t2dt3eiEm(t2t3)/kVmk(t3)λkn(t3,t1)

この式 (3) が示す物理的意味は上述の式(6-19)と同じである.すなわち, 終状態の波動関数 ψ(x2,t2) を無摂動ハミルトニアンの固有関数 ϕ(x2) で展開したとき λmn を用いて,
(4)ψ(x2,t2)=mλmn(t2,t1)ϕm(x2)

と表せるのであったから, これに式(3)の λmn を代入するならば,
ψ(x2,t2)=mδmnϕm(x2)eiEm(t2t1)/mit1t2dt3eiEm(t2t3)/kVmk(t3)λkn(t3,t1)ϕm(x2)(5)ϕn(x2)eiEn(t2t1)/+mλmn(t2,t1)ϕm(x2)

となる.このとき第1項目は散乱を受けずに状態 n に留まる確率振幅であり, 第2項目は散乱を受けて他の状態 m たちへ遷移する確率振幅すなわち「遷移振幅」である.
ただし, 第2項目に於ける状態 n に見出される振幅すなわち「m=n のときの遷移振幅 λnn」というのは, 本文で後述されているように「ポテンシャル V による状態 n からの散乱が可能な振幅と解釈するべき」である.