D.F.Styer による校訂版では, § 9-4 の式たちがだいぶ修正されている.ここでは, Feynman の原書の式の形をなるべく保ちながら, それらの導出過程などを脚注として加筆し(または加筆部分には黄色アンダーラインを施した), また, 記号や式を修正したものを示しておこう (大事な修正部分には赤色アンダーラインを施し, 修正した主な式は青色表示とした).
9-4 場と物質の相互作用(INTERACTION OF FIELD AND MATTER)
輻射場と物質の相互作用を扱うことは形式的には難しくない.作用の式である式 (9-30), 式 (9-31) そして式 (9-32) から, 我々が扱うべき系は明らかに輻射場と相互作用している物質系であり, その振幅
すなわち, 核
原子からの放射(Emission from an Atom)
この問題を複雑にしている原因の一部は, 多くの座標と状態が存在することによる混乱である.そこで, まずは簡単な問題を扱って, その内容に慣れるようにしよう.摂動論を利用して, 1個の原子によって光が放射される確率の問題を解くことにする(光と物質の相互作用
である.この状態の波動関数は積の形になる:
ただし
原子による光子の放射を扱うには, 初期状態として原子がある準位
ただし
毎秒当たりの遷移確率を(1次まで) 求めるには, 式 (6.79) により, これらの状態間の摂動ポテンシャルの行列要素
ただし
この摂動ポテンシャルの行列要素は, 式(6.71)より, そして
すると, この行列要素
この結果は「式 (9-50) の被積分関数に於いて, 積分変数が
また, 行列要素
毎秒当たりの遷移確率は, 問題 6-24 の結果式 (6-94) を用いることで得られる.始状態で準位
また, この場合
ここでデルタ関数の性質:
通常では, 1つの特定な光子を励起する(放射する)問題に興味はなく, むしろ
これの
このとき放出される光の角周波数
References
↑1 | 式 (9.44) の振幅は, §3-7 の「多数の系が相互作用する場合」に対する振幅と見做すことが出来る.§3-7 の記述は次のようになっている:「多数の変数を含むもう1つの状況として2つの系が相互作用する場合がある.一方の系は質量 であるから, 核は次となる: これは, 式 (2-25) を一般化したものとして数学的に理解できるであろう.すなわち座標 |
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↑2 | 初期状態 摂動ポテンシャルが時間に依存しないで 従って, 時間間隔 よって, 単位時間当たりの遷移確率を求めるには, 摂動ポテンシャルの行列要素 摂動の作用 このとき, 問題 9-2 の式 (9-16) から また基準座標については, 式 (8-77) から そして Diracの § 10-4 にあるように, |
↑3 | この摂動ポテンシャルの行列要素 |
↑4 | |