Landau and Lifshitz : Quantum Electrodynamics §33 にパウリ方程式が載っていたのでその訳文を書いておく.しかし,その導出過程で出現する式 (33.5-a) が最初に見たらちょっと不可解に思えた.その解決を付記した §33 を記事として書いておこう.
非相対論的極限(
外場内の電子に対するディラック方程式から出発しよう:
粒子の相対論的エネルギーには, その静止エネルギーも含まれる.非相対論的近似へ移るときに, それは消去されなければならない.従って次式のように定義される関数
すると,
以下では
1次近似では式 (33.3) の左辺で
(従って
パウリ行列に対して次の関係式が成り立つ:
ただし
から導出することが出来る.今の場合
よって, [1]式 (33-5-a) の2番目の等号では, 最初に見た時には前式の第1成分
従って, [2]上述のパウリ行列の基本的性質だけを用いて, 式 (33.6) を導出する仕方が 河合, 猪木著「量子力学II」の p.591 に示されている.そこでは, … Continue reading
ただし
これがいわゆる「Pauli方程式」である.これはハミルトニアンに最後の項が現れる点で, 非相対論的シュレディンガー方程式と異なっている.この項は外場内に於ける磁気的2重極のポテンシャルエネルギーの形をしている.このようにして
を持つ粒子のように振る舞う.この磁気回転比
References
↑1 | 式 (33-5-a) の2番目の等号では, 最初に見た時には前式の第1成分 これはベクトル積の場合にも当然言えることだ.そこでベクトル解析の公式から, よって, 第2項目を左辺に移項すれば, これが式 (33-5-a) の変形の意味である ( J.J.Sakurai : Advanced Quantum Mechanics § 3-2 を参照した.). また, 式 (1) が成り立つことは, それを成分で書くことで容易に確認することが出来る: 従って, 式(2)+式(3)を求めれば, |
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↑2 | 上述のパウリ行列の基本的性質だけを用いて, 式 (33.6) を導出する仕方が 河合, 猪木著「量子力学II」の p.591 に示されている.そこでは, 機械的に計算するだけで結果が自動的に得られる.( しかし, ここで述べた演算子の性質が使われていることに気付くことは出来ないであろう.) |
↑3 | この注目すべき結果は1928年にディラックにより得られた.方程式 (33.7) の満足する2成分波動関数はパウリにより1927年に導かれた.これはディラックによるその方程式の発見以前のことである. |