問題 6-21 の解答例

Feynman&Hibbs 裏表紙

Problem 6-21
Consider the special case that the perturbing potential V has no matrix elements except between the two levels 1 and 2; and further, suppose these levels are degenerate, that is, suppose E1=E2. Let V12=V21=v and let V11, V22 and all other Vmn be zero. Show that

(6-81)λ11=eiET/[1v2T222+v4T4244]=eiET/cosvT(6-82)λ12=eiET/[ivT+iv3T363]=ieiET/sinvT


(解答) (注意) 原書や訳本に於いては指数因子 eiET/ が記していないが, これは印刷ミスではなかろうか (?). 上記の問題文では, それを修正してあるので注意するべし!.
 式 (6-76) において t1=0,t2=T とすると次式が言える:

(1.a)iddTλ11=k=12V1kλk1+E1λ11=vλ21+Eλ11(1.b)iddTλ12=k=12V1kλk2+E1λ12=vλ22+Eλ12(1.c)iddTλ21=k=12V2kλk1+E2λ21=vλ11+Eλ21(1.d)iddTλ22=k=12V2kλk2+E2λ22=vλ12+Eλ22

このとき仮定より準位 1 と準位 2 とは縮退し, かつ摂動も V12=V21 と仮定したから, 状態遷移
|1|2,|2|1 は同じ確率で生じると考えてよいであろう. よって, 遷移振幅は λ11=λ22 かつ λ12=λ21 と考えられる. すると上の 4 式で独立な式は, 例えば式 (1.a) と式 (1.c) の 2 つであると言える:
(1.a)iddTλ11=vλ21+Eλ11(1.c)iddTλ21=vλ11+Eλ21

2 式を足し合わせるならば,
iddT(λ11+λ21)=(v+E)(λ11+λ21)d(λ11+λ21)(λ11+λ21)=v+EidT,(2)log(λ11+λ21)=(v+E)iT+C,λ11+λ21=Aei(v+E)T/

式 (6-69) から, λmn(T,0)=λmn=δmneEmT/+λmn(1)(T)+ であるが, 初期状態 T=0 を考えるならば, まだ摂動が働いていないときであるから λmn=δmn である. よって,
(3)λ11(0)=δ11=1,λ21(0)=δ21=0,λ12(0)=δ12=0,λ22(0)=δ22=1

従って, 上式の積分定数は A=1 としてよい. また (λ12+λ22) についても同様な式が得られる. よって,
λ11+λ21=eiET/eivT/=eiET/(cosvTisinvT)(4.a)=eiET/cosvTieiET/sinvT,λ12+λ22=eiET/eivT/=eiET/(cosvTisinvT)(4.b)=eiET/cosvTieiET/sinvT

前述のように対称性から λ12=λ21,λ11=λ22 とすべきである. よって上式の形から, 遷移振幅の各々は問題文中の結果式 (6-81) と式 (6-82) となるであろう (vE なので vT は微小と見做しテイラー展開できるとする):
(6-81)λ11=λ22=eiET/cosvT=eiET/[112!(vT)2+14!(vT)4](6-82)λ21=λ12=ieiET/sinvT=ieiET/[(vT)13!(vT)3+]

前に書いたブログ記事から, 係数 cm(t) と遷移振幅 λmn とは次の関係にあると言える:
cm(t)=m|UI(t,t0)|n=ei(EmtEnt0)/m|U(t,t0)|n=ei(EmtEnt0)/λmn(t)(5)cm(t)=ei(EmtEnt0)/λmn(t)

この関係式をここの問題に当てはめるならば, t0=0,t=T そして Em=En=E として次となる:
(6)cm(T)=eiET/λmn(T)

すると上式 (6-81) と式 (6-82) から, 「係数 cm(T) が原書や訳本と同じ形になる!」と言えよう:
(7.a)c1(T)=eiET/λ11=cosvT=112!(vT)2+14!(vT)4(7.b)c2(T)=eiET/λ21=isinvT=i[(vT)13!(vT)3+]