Feynman QED Fifth Lecture

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\(\textit{Fifth Lecture}\)

双極子近似での選択則(Selection Rules in the Dipole Application)

双極子近似では,適切な行列要素は次のようになる:

\begin{equation}
\def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}}
\def\pdiff#1{\frac{\partial}{\partial #1}}
\def\mb#1{\mathbf{#1}}
\def\reverse#1{\frac{1}{#1}}
\def\ds#1{\mbox{${\displaystyle\strut #1}$}}
\mb{x}_{if}=\int \psi_{f}^{*}\,\mb{x}\,\psi_i\,dVol
\tag{1.5.1}
\end{equation}

\(\mb{x}_{if}\) の成分は \((x_{if},\,y_{if}\,z_{if})\) であり, そして
\begin{equation}
\text{Trans.prob.} \approx |\mb{x}_{if}|^{2}=|x_{if}|^{2}+|y_{if}|^{2}+|z_{if}|^{2}
\tag{1.5.2}
\end{equation}

選択規則は, この行列要素がゼロとなる条件によって決定される.例えば, 水素の初期状態と最終状態が \(S\) 状態(球対称)の場合, \(\mb{x}_{if}=0\) となり, これらの状態間の遷移は「禁止」される.しかし \(P\) 状態から \(S\) 状態への遷移では \(\mb{x}_{if}\neq 0\) となり, 「許可」される.
一般に, 1個の電子が遷移する場合の選択則は次である:
\begin{equation}
\Delta L = \pm 1
\tag{1.5.3}
\end{equation}

このことは「座標 \(x,y,z\) が本質的にルジャンドル多項式 \(P_1\) であること」から分かるであろう [1][訳註] 次をLegendreの微分方程式という: \begin{equation*} (1-x^{2})\frac{d^{2}y}{dx^{2}}-2x\frac{dy}{dx}+n(n+1)y=0 \end{equation*} この式中の \(n\) … Continue reading .初期状態の軌道角運動量が \(n\) の場合, 波動関数は \(P_n\) を含んでいる.しかし,
\begin{equation}
x\,P_n = P_1P_n = \frac{1}{(2n+1)}\bigl[nP_{n-1}+(n+1)P_{n+1}\bigr]
\tag{1.5.4}
\end{equation}

ゆえに行列要素がゼロでない場合, 終状態の角運動量は \(n\pm1\) であるはずであるから, その波動関数は \(P_{n+1}\) か \(P_{n-1}\) のどちらかを含むであろう.
(1個以上の電子を持つ)複合原子の場合, そのハミルトニアンは次である:
\begin{equation}
H=\sum_{\alpha}\left[\mb{P}_{\alpha}-\frac{e}{c}\mb{A}(\mb{x}_{\alpha})\right]^{2}+\text{Coulomb terms}
\tag{1.5.5}
\end{equation}

遷移確率は \(\displaystyle |P_{mn}|^{2}=\Bigl|\sum_{\alpha}(\mb{P}_{\alpha})_{mn}\Bigr|^{2}\) に比例する.ただし和は原子中の全ての電子について取る.証明されていることだが,「定数まで含めれば(up to a constant)」 \((\mb{P}_{\alpha})_{mn}\) は \((\mb{x}_{\alpha})_{mn}\) と同じであり [2] [訳註] \(\mb{p}_{fi}=im\omega\mb{x}_{fi}\)であった.この式は式(1.3.22)を導出するのに用いた., そして遷移確率は次に比例する:
\begin{equation}
|\mb{x}_{mn}|^{2}=\left|\sum_{\alpha}(\mb{x}_{\alpha})_{mn}\right|^{2}
\tag{1.5.6}
\end{equation}

特に, 電子が 2 個の場合の行列要素は,
\begin{equation}
\int \psi^{*}_f(\mb{x}_1,\mb{x}_2)\bigl(\mb{x}_1+\mb{x}_2\bigr)\psi_i(\mb{x}_1,\mb{x}_2)\,d\mb{x}_1\,d\mb{x}_2
\tag{1.5.7}
\end{equation}

座標の回転の下では, ベクトル \((\mb{x}_1+\mb{x}_2)\) は角運動量 \(1\) (すなわち\(\hbar\)) を持つ物体の波動関数と同様の振る舞いをする [3][訳註] あらゆるスカラー量(即ち座標変換によって変わらない量)に対しては「角運動量 \(L=0\) が対応する」.その訳は \(L=0\) のとき \(2L+1=1\) … Continue reading.初期状態の物体と原子が相互作用しないならば,「積 \((\mb{x}_1+\mb{x}_2)\psi(\mb{x}_1,\mb{x}_2)\) は, 全角運動量の値として \(\mb{J}_i+1\), \(\mb{J}_{i}\), \(\mb{J}_i-1\) を持ち得る系(原子+物体)の波動関数である」と正規に見做すことが出来る.従って, 行列要素がゼロとならないのは, 終状態の角運動量 \(\mb{J}_f\) が \(\mb{J}_i\pm1\) または \(\mb{J}_i\) の3つの値であるときだけである.よって一般的な選択則は \(\Delta L =\pm1,0\) となる.

パリティ(Parity).

パリティ(偶奇性)」とは, 全ての座標を鏡映(reflection)したときの波動関数の振舞いに属する(関係する)特性である.すなわち, もし
\[\psi(-\mb{x}_1,-\mb{x}_2,\dotsb)=+\psi(\mb{x}_1,\mb{x}_2,\dotsb)\]
ならば,「パリティは偶(even)」である.または, もし
\[\psi(-\mb{x}_1,-\mb{x}_2,\dotsb)=-\psi(\mb{x}_1,\mb{x}_2,\dotsb)\]
ならば,「パリティは奇(odd)」である.
双極子近似に伴う行列要素に於いて, 積分変数を \(\mb{x}=-\mb{x}’\) に変更したならば, 結果は次となる:

\begin{equation}
\mb{x}_{fi}=\int \psi_f^{*}(\mb{x})\,\mb{x}\,\psi_i(\mb{x})\,d^{3}\mb{x}
=\int \psi_f^{*}(-\mb{x}’)\,\bigl(-\mb{x}’\bigr)\,\psi_i(-\mb{x}’)\,d^{3}\mb{x}’
\tag{1.5.8}
\end{equation}

もし \(\psi_f\) のパリティが \(\psi_i\) と同じであるならば次のことが言える (\(\pm\)は複合同順とする):
\begin{align}
\int \psi_f^{*}(-\mb{x}’)(-\mb{x}’)\psi_i(-\mb{x}’)\,d^{3}\mb{x}’
&=\int \{\pm\psi_f^{*}(\mb{x}’)\}(-\mb{x}’)\{\pm\psi_i(\mb{x}’)\}\,d^{3}\mb{x}’\notag\\
&=\int \psi_f^{*}(\mb{x})(-\mb{x})\psi_i(\mb{x})\,d^{3}\mb{x}=-\mb{x}_{fi},\notag\\
\rightarrow\quad \mb{x}_{if}=-\mb{x}_{fi}\ \rightarrow\ 2\mb{x}_{fi}=0&\quad
\therefore\quad \mb{x}_{if}=-\mb{x}_{fi}=0
\tag{1.5.9}
\end{align}

従って,「許される遷移ではパリティは変化しなければならない」という規則が成り立つ.\(1\) 電子からなる原子では \(L\) がそのパリティを決定する; 従って \(\Delta L = 0\) は, (パリティ変化がないので)禁止される.多電子原子の場合, パリティは \(L\) では決まらない(各電子の角運動量のベクトル的な和ではなく代数的な和によって決まる).従って \(\Delta L=0\) の遷移は起こり得る.しかしながら \(0\to0\) 遷移は常に禁止される.なぜなら, 光子は \(1\) 単位の角運動量を常に持っている(carry)からである.
全ての波動関数は奇パリティか偶パリティの何れかを持っている.これは, パリティ操作の下で(外部磁場がない場合の)ハミルトニアンが不変であると言う事実から分かることである.すると, もし \(H\psi(\mb{x})=E\psi(\mb{x})\) ならば \(H\psi(-\mb{x})=E\psi(-\mb{x})\) もまた真である.従って, 状態が縮退していないならば \(\psi(-\mb{x})=\psi(\mb{x})\) か \(\psi(-\mb{x})=-\psi(\mb{x})\) の何れかであることになる.もし状態が縮退しているならば \(\psi(-\mb{x})\ne \psi(\mb{x})\) が可能である.しかしその場合, 完全な解は次の線型結合の何れかになる:
\begin{equation}
\begin{cases} \psi(\mb{x})+\psi(-\mb{x})\quad & \text{: even parity} \\
\psi(\mb{x})-\psi(-\mb{x})\quad & \text{: odd parity}
\end{cases}
\tag{1.5.10}
\end{equation}

禁制線(Forbidden Lines).

気体が十分に希薄であれば, 禁制のスペクトル線が現れることがある.すなわち, 禁制は全ての場合で絶対的と言う訳ではない.それは単に, その状態の寿命が, 無限大ではないけれど, 許される場合よりもはるかに長いということかもしれない.従って, もし衝突率が十分に小さいならば, 禁止された遷移が起こる時間は十分に有り得る.
双極子近似は, 次のほぼ正確な行列要素中の \(e^{-i\mb{K}\cdot\mb{x}}\) を \(1\) に置き換える:

\begin{equation}
\int \psi_f^{*}\,(\mb{e}\cdot\mb{p})\,e^{-i\mb{K}\cdot\mb{x}}\,\psi_i\,d^{3}\mb{x}
\tag{1.5.11}
\end{equation}

もしこれがゼロになるならば, 前述したようにその遷移は禁止される.次の高次近似, すなわち四重極近似では \(e^{-i\mb{K}\cdot\mb{x}}\) を \(1-i\mb{K}\cdot\mb{x}\) で置き換えるので, 行列要素は次となる:
\begin{equation}
-i\int \psi_f^{*}\,(\mb{e}\cdot\mb{p})\,(\mb{K}\cdot\mb{x})\,\psi_i\,d^{3}\mb{x}
\tag{1.5.12}
\end{equation}

光が \(z\) 方向に進み, 偏極は \(x\) 方向である場合では \((\mb{e}\cdot\mb{p})=p_x,\,(\mb{K}\cdot\mb{x})=Kz\) となるので, 上式は次となる:
\begin{equation}
-iK\int \psi_f^{*}\,(p_x z)\,\psi_i\,d^{3}\mb{x}=-iK\cdot {}_f(p_x z)_i
\tag{1.5.13}
\end{equation}

そして遷移確率は次に比例する:
\begin{equation}
(K)^{2}|{}_f(p_x z)_i |^{2}
\tag{1.5.14}
\end{equation}

それに対して双極子近似では, 遷移確率は次に比例するのであった:
\begin{equation}
|{}_f(p_x z)_i |^{2}
\tag{1.5.15}
\end{equation}

従って, 四重極近似における遷移確率は, 少なくとも \((Ka)^{2}=2\pi a^{2}/\lambda\) のオーダーとなり, 双極子近似よりも小さくなる.ただし \(a\) は原子の大きさのオーダーであり, \(\lambda/2\pi\) は放出される光の波長のオーダーである.

【 問題 】 次式を示せ:

\begin{equation}
H(xz)-(xz)H =\frac{\hbar}{im}(p_x z + x p_z)
\tag{1.5.16}
\end{equation}

従って次となる:
\begin{equation}
\left[\frac{\hbar}{im}(p_x z + x p_z)\right]_{mn}=(xz)_{mn}(E_m-E_n)
\tag{1.5.17}
\end{equation}

このとき \(p_x z\) は, 次のような和の形に書けることに注意する:
\begin{equation}
p_x z = \frac{1}{2}(p_x z + x p_z) + \frac{1}{2}(p_x z – x p_z)
\tag{1.5.18}
\end{equation}

( 解答例 ) 観測量 \(A^{(H)}\) として \(xz\) を考える.観測量 \(A^{H}\) に対するハイゼンベルグの運動方程式から, 演算子 \(xz\) に対するハイゼンベルグ運動方程式は次となる:
\begin{equation*}
\frac{d A^{(H)}}{d t}=\frac{1}{i\hbar}[A^{(H)},H]\quad\rightarrow\quad
i\hbar\frac{d }{dt}xz =[xz,H]=-[H,xz]
\end{equation*}

この時,
\begin{equation*}
\frac{d }{dt}xz = \frac{dx}{dt}z + x\frac{dz}{dt},\quad [H,xz]=Hxz-xzH,
\end{equation*}

また J.J.Sakurai の § 2.2 によれば,
\begin{equation*}
\frac{dx_i}{dt}=\frac{p_i}{m},\quad\rightarrow\quad
\frac{dx}{dt}=\frac{p_x}{m},\quad \frac{dz}{dt}=\frac{p_z}{m}
\end{equation*}

従って,
\begin{align*}
-i\hbar\frac{d}{dt}xz = -i\hbar\left(\frac{p_x}{m}z+x\frac{p_z}{m}\right)
=\frac{\hbar}{im}\bigl(p_x z + x p_z\bigr)=Hxz-xzH
\end{align*}
この両辺の行列要素を考えると,
\begin{align*}
\int \psi_m^{*} (Hxz -xz H)\psi_n\,d^{3}\mb{x}
&=\int (H\psi_m)^{\dagger}xz\psi_n\,d^{3}\mb{x}-\int \psi_m^{*}xz (H\psi_n)\,d^{3}\mb{x}\\
&=E_m\int \psi_m^{*}xz\psi_n\,d^{3}\mb{x}-E_n\int \psi_m^{*}xz\psi_n\,d^{3}\mb{x}\\
&=E_m (xz)_{mn}-E_n(xz)_{mn}=(xz)_{mn}(E_m-E_n),\\
\int \psi_m^{*}\frac{\hbar}{im}\bigl(p_x z + x p_z\bigr)\psi_n\,d^{3}\mb{x}
&=\left[\frac{\hbar}{im}\bigl(p_x z + x p_z\bigr)\right]_{mn},\\
\therefore\quad
\left[\frac{\hbar}{im}\bigl(p_x z + x p_z\bigr)\right]_{mn}&=(xz)_{mn}(E_m-E_n)
\qquad \blacksquare
\end{align*}
前述の問題から,”定数まで含めれば” \(p_x z\) の最初の項すなわち \((p_x z +xp_z)/2\) は \(x z\) に等価であることが分かる (From the preceding problem, the first part of \(p_x z\) is seen to be equivalent, up to a constant, to \(xz\)). \(xz\) は角運動量が \(2\) で偶パリティの波動関数と同様な振舞いを行う.2番目の部分は角運動量演算子 \(L_y\) であり, 角運動量 \(1\) で偶パリティの波動関数のように振る舞う.従って, 最初の部分に対応する選択則は \(\Delta J=\pm 2,\pm 1,0\) で, パリティを変更することはないことが分かる.このタイプの放射は「電気四重極」と呼ばれる.\(p_x z\) の2番目の部分に対応する選択則は \(\Delta J=\pm 1,0\) で, パリティの変化はなく, 対応する放射は「磁気双極子」と呼ばれる.\(\Delta J=\pm 2\) でなければ, 角運動量やパリティの変化で2種類の放射を区別することは出来ない.\(\Delta J=\pm 1,0\) の場合, 両者は放射の偏光によってのみ区別できる.両方のタイプが同時に発生し, 干渉が生じることがある.
電気四重極放射の場合, 暗黙の選択則として \(1/2\to 1/2\) および \(0\to1\) の遷移は禁止される (\(\Delta J\)が\(\pm1\)であっても).なぜなら, 角運動量のベクトルが \(2\) だけ変化することが要求されるが, この場合それは不可能であるからである.
さらに高次の近似を続けると同様の推論によって, 角運動量のベクトル変化, すなわち光子の角運動量, そして様々な多極子オーダーに関わるパリティ変化と全角運動量の変化 \(\Delta J\) の選択則を導くことができる (表5-1).

table 5-1

表 5-1. 遷移及びその選択則の分類

実は, 潜在的な \(\Delta J\) の選択規則の全ては高次の多極子ほど多くなるが, 選択規則を次のように書くことでそれらを明示的に表現することが出来る:

\begin{equation*}
|J_f -J_i|\le l \le J_f+J_i
\end{equation*}

ただし \(2^{l}\) は多極子のオーダー, すなわち \(l\) は角運動量に於けるベクトル変化である.
いわゆる「パリティ優先遷移」(parity-favored transitions)では, 初期パリティと最終パリティの積が \((-1)^{J_f-J_i}\) であり, 最低限の多極子のオーダーが \(J_f-J_i\) であるが, その場合, 表 5-1 の破線の縦線に含まれる多極子タイプの遷移確率はほぼ等しいことが分かった [4] これは, ガンマ線を放出する原子核には当てはまらないようだ.不明瞭な理由から, 多極子の各々のオーダーで磁気放射が優勢になる. .「パリティ非優先遷移」(parity-unfavored transitions)ではこれは当てはまらないかも知れない.その場合, パリティ積は \((-1)^{J_f -J_i+1}\) であり, 最低限の多極子オーダーは \(|J_f -J_i|+1\) である.

References

References
1 [訳註] 次をLegendreの微分方程式という:
\begin{equation*}
(1-x^{2})\frac{d^{2}y}{dx^{2}}-2x\frac{dy}{dx}+n(n+1)y=0
\end{equation*}

この式中の \(n\) が正整数である場合の1つの特解を「\(n\)次のLegendre多項式」という:
\begin{align*}
P_n(x)&=\frac{(2n)!}{2^{n}(n!)^{2}}\left\{
x^{n}-\frac{n(n-1)}{2(2n-1)}x^{n-2}+\frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{2\cdot4(2n-1)(2n-3)}x^{n-4}-\dotsb\right\}\\
&=\sum_{s=0}^{\le \frac{n}{2}} (-1)^{s}\frac{(2n-2s)!}{2^{n}s!(n-s)!(n-2s)!}x^{n-2s}
\end{align*}
ただし \(\displaystyle\le \frac{n}{2}\) は \(n\) が偶数か奇数かに従ってそれぞれ \(\displaystyle\frac{1}{2}n\) または \(\displaystyle\frac{1}{2}(n-1)\)を示す記号である.\(P_n\) を具体的に書くと次となる:
\begin{equation*}
P_0(x)=1,\ P_1(x)=x,\ P_2(x)=\frac{3}{2}x^{2}-\frac{1}{2},\ P_3(x)=\frac{5}{2}x^{3}-\frac{3}{2}x,\
P_4(x)=\frac{5\cdot7}{2\cdot4}x^{4}-\frac{3\cdot5}{2\cdot4}2x^{2}+\frac{1\cdot3}{2\cdot4},\ \dotsb
\end{equation*}

このとき \(P_1(x)=x\) であるから,「座標 \(x\) は \(P_1(x)\) である」と言える!.
また Riemann 面上での閉路 \(C\) に沿って積分した式 \(P_\nu(z)\) を「第1種 Legendre 関数」と言う:
\begin{equation*}
P_\nu(z)=\frac{1}{2\pi i}\oint \frac{(t^{2}-1)^{\nu}}{2^{\nu}(t-z)^{\nu+1}}\,dt
\end{equation*}

この関数 \(P_{\nu}(z)\) について, 次の漸化式が成り立つ:
\begin{equation*}
(\nu+1)P_{\nu+1}(z)-(2\nu+1)z P_{\nu}(z)+\nu P_{\nu-1}(z)=0,\quad \rightarrow\quad
(n+1)P_{n+1}-(2n+1)P_1 P_{n}+n P_{n-1}=0
\end{equation*}

ここで係数の \(z\) を \(P_1\) とし \(\nu\to n\) としたものが本文の式 (1.5.4) である.
2 [訳註] \(\mb{p}_{fi}=im\omega\mb{x}_{fi}\)であった.この式は式(1.3.22)を導出するのに用いた.
3 [訳註] あらゆるスカラー量(即ち座標変換によって変わらない量)に対しては「角運動量 \(L=0\) が対応する」.その訳は \(L=0\) のとき \(2L+1=1\) となり,「互いに変換し合う量は全部でただ一つしかないからである.同様にしてベクトル量は「角運動量 \(L=1\)」と書くことが出来る.なぜならば \(2L+1=3\) なので, これは座標系の回転に対して互いに変換し合うベクトルの独立な3成分に対応するからである.(ランダウ量子力学の§18より).
4 これは, ガンマ線を放出する原子核には当てはまらないようだ.不明瞭な理由から, 多極子の各々のオーダーで磁気放射が優勢になる.