Feynman QED Eighth Lecture

Eighth Lecture

自由空間に於けるマックスウェル方程式の解

自由空間(すなわち ρ=0,j=0 の真空)に於ける波動方程式, つまり式 (2.7.21′) で ρ=0,j=0 とした式, または jμ=0 と置いた式 (2.7.23) のマクスウェル方程式
(2.8.1)2ϕ1c22ϕt2=0,and2A1c22At2=0,2Aμ=0
の平面波解は [1][訳註] (ランダウ:「力学・場の力学」より) ポテンシャルの持つ任意性のため, … Continue reading,
(2.8.2)Aμ=ϵμeikX
ただしϵμkμは定数ベクトルであり, そして kμ は次の条件に従う:
(2.8.3)kμkμ=kk=0
これは νeikX に作用すると ikν を掛け合わせる効果を持つことから理解できるであろう (直交座標系なので νϵμ には作用しない).従って,
2Aμ=ν(νAμ)=ν(νϵμeikνXν)=ν(ϵμ(ikν)eikνXν)=ϵμ(ikν)(νeikνXν)=(ikν)(ikν)ϵμeikX=(kνkν)Aμ=0
この演算に於いてνAμは, 実際は「2階テンソル」, そして ν(νAμ) は「3階テンソル」を形成しており, 従って添字 ν の縮約により「1階テンソル」即ち「ベクトル」となることに注意する.

kμ は「伝搬ベクトル」(propagation vector) であって, 次の成分を持つ:
(2.8.4)kμ=(ωc,Kx,Ky,Kz)=(ωc,K)
従って, 通常の表記では [2][訳註] 前講から4元座標は X=(ct,X) であるから, \begin{align*} k\cdot X =k^{\,\mu}X_{\mu}=\left(\frac{\omega}{c},\,\mb{K}\right)\cdot \left(ct,\,-\mb{X}\right)=\omega t … Continue reading
(2.8.5)exp(ikX)=exp{i(ωtKX)}
そして, 条件 kk=0 は次を意味する:
(2.8.6)kk=kμkμ=(ωc,K)(ωc,K)=ω2c2KK=0


【 問題 】 ローレンツ条件: μAμ=0 は, kϵ=0 を含意していることを示せ.

(解答例) ローレンツ条件式 μAμ=0Aμ=ϵμeikX を代入してみると,

μAμ=μ(ϵμeikX)=ϵμ(μeikμXμ)=ϵμ(ikμ)eikX=i(ϵμkμ)eikX=0

これが満たされるためには ϵμkμ=0 すなわち ϵk=0 が成り立っていれば良い.


3次元で作業する場合, 偏極ベクトル ϵKϵ=0 となるように取り, そして「スカラーポテンシャルは ϕ=0 とする」 のが通例である.しかしそれが唯一の条件ではない.つまり, これは相対論的に不変ではなく, ある一つの座標系に於いてのみ成り立つ.これは Ke=0 の系に唯一性を与えるパラドックスであり, 相対性理論とは相容れない状況のように思われる.しかしこの「パラドックス」は, いわゆる「ゲージ変換は常に行うことが出来る」という事実によって解決される.その変換では, 場 Fμν は変化しないが ϵ は「変化する」.従って, 特定の系で Kϵ=0 を選択するのは「特定のゲージを選択すること」に等しい.(それを以下で示す).

ゲージ変換の式 (2.7.19) は次の2式に書ける:
Aμ=Aμμχ,whereAμ=(ϕ,A),μ=(1ct,),(2.8.7)ϕ=ϕ1cχt,A=A+χ
ただし χ はスカラーである.式 (2.7.20) のローレンツ条件 μAμ=0 の両辺に μ を作用させると,
(2.8.8)μAμ=μ(Aμμχ)=μAμμμχ=μAμ2χ=0
従って, もし
(2.8.9)2χ=0
が成り立つならば,

μAμ=μAμ=0

となるから,「ゲージ変換をしてもローレンツ条件の式 (2.7.20) は依然として成立する」であろう.方程式 (2.8.9) は, 解として χ=αeikX を持つ.ただし α は任意定数である.従って,
Aμ=ϵμeikX=Aμμχ=Aμμ(αeikμXμ)=ϵμeikXα(ikμ)eikX=(ϵμ+iαkμ)eikX
従って,
(2.8.9)ϵμ=ϵμ+iαkμ
は, ゲージ変換によって得られる新たな偏極ベクトルである.通常の表記では, これは次の2式となる:
(2.8.10)ϵ=ϵ+iαK,ϵ0=ϵ0+iαωc
この両辺に K を掛け合わせ, 式 (2.8.6) の ω2c2KK=0 を用いると,
(2.8.11)Kϵ=Kϵ+iαKK=Kϵ+iαω2c2
従って, どんな座標系を用いている場合でも, 定数 α を適切に選択することで
Kϵ=0

とすることが出来る.

場は明らかにゲージ変換を受けても変わらない.なぜなら, 微分の順序は重要ではないからである:
Fμν=μAννAμ=μ(Aννχ)ν(Aμμχ)=μAνμνχνAμ+νμχ=μAννAμμνχ+νμχ=μAννAμμνχ+μνχ=μAννAμ=Fμν

相対論的素粒子論(Relativistic Particle Mechanics)

通常の(3次元)速度」の成分は 4-ベクトルの成分のようには変換しない.しかし, 別の量
(2.8.13)uμdzμdτ=(cdtdτ,dxdτ,dydτ,dzdτ), where  dzμ=(cdt,dx,dy,dz)
は, 粒子の経路要素である (この uμ が「4元速度」である).そして dτ は次式で定義される「固有時間」(proper time) である:
(2.8.14)ds2=dt2dx2dy2dz2c2dτ2
通常の速度 v=(vx,vy,vz) との関係は次式のようになる: [3][訳註] (ランダウ:「力学・場の理論」§35より) ある慣性基準系 K から速さ v で運動している時計(その慣性系を K とする) … Continue reading
dxdτ=dxdtdtdτ=vx1(v/c)2,dydτ=vy1(v/c)2,(2.8.15)dzdτ=vz1(v/c)2,dtdτ=11(v/c)2
従って uμ=(u0,u1,u2,u3) は,
(2.8.16)u0=cdtdτ=c1(v/c)2,uk=vk1(v/c)2(k=1,2,3)
u2=uμuμ=c2 であることは明らかである.なぜなら,
uμuμ=(cdtdτ,dxdτ,dydτ,dzdτ)(cdtdτ,dxdτ,dydτ,dzdτ)=c2(dtdτ)2(dxdτ)2(dydτ)2(dzdτ)2=c21(v/c)2vx21(v/c)2vy21(v/c)2vz21(v/c)2(2.8.17)=c21(v/c)21(v/c)2=c2
4元運動量pμ は次式で定義される:
pμ=muμ=(p0,p1,p2,p3)=(Ec,px,py,pz)(2.8.18)=(mc1(v/c)2,mvx1(v/c)2,mvy1(v/c)2,mvz1(v/c)2)
cp0 は「全エネルギーE であることに注意する:
(2.8.19)p0=Ec=mc1(v/c)2,E=cp0=mc21(v/c)2=γmc2
従って, 通常の表記での「3次元運動量」p は次で与えられる:
(2.8.20)Ec2=11β2=γm,p=mv1β2=γmv=Ec2v
ここで v は「通常の3次元速度」である.

速度と同様に, 通常の力の成分は dp/dt で定義されるが, これは4元ベクトルの成分を形成することは出来ない.しかし次の量は4元ベクトルを成す:
(2.8.21)fμ=dpμdτ
この成分は次となる:
fk=dpkdτ=dpkdtdtdτ=Fk11β2=dtdτddtpk=11β2ddt(mvk1β2)(k=1,2,3),f0=dp0dτ=dp0dtdtdτ=d(E/c)dtdtdτ=1cdEdtdtdτ=(Power)c11β2=(rate of change of Energy)cγ(2.8.22)=dtdτddtp0=γddt(mc21β2)
ただし Fk は通常の力である:
Fk=ddtpk=ddt(mvk1β2)
以上のことは, mc21β2 が全エネルギー E であることから, または, 次の通常の恒等式からも分かることである:
(Power)=Fv=(ddtp)v=v[ddt(mv1β2)]=v1β2ddt(mv)+mvv(ddt11β2)(2.8.23)=m1β2(vdvdt)+mv21c2(1β2)3/2vdvdt
ここで, vv=v2 の両辺を時間微分すると
ddt(vv)=dvdtv+vdvdt=2vdvdt=ddtu2=2ududt,(2.8.24)vdvdt=vdvdt
この関係を前式 (2.8.23) に代入すると,
(Power)=m1β2vdvdt+mβ2(1β2)1β2vdvdt=m1β2(1β21β2)vdvdt(2.8.25)=mv1β2dvdt=ddt(mc21β2)
従って, ニュートン方程式に類似した相対論的な式は次となる:[4][訳註] (C.メラー §27 より) 粒子の運動量が変化していれば, 粒子は単位時間当たりの運動量の変化に等しい力 F … Continue reading
(8-1)ddτpμ=fμ=md2zμdτ2=mduμdτ
通常のローレンツ力は,
(2.8.26)F=eE+ecv×B
そして, エネルギーの変化率(Power) は,
(2.8.27)(Power)=Fv=eEv
すると, 式 (2.8.22) の fμ すなわち「4元力」(four-force) は,
f=F1β2=e1β2(E+1cv×B),(2.8.28)f0=(Power)c11β2=eEvc11β2=ec1β2Ev
となる.


【 問題 】 ff0 で与えられる表現式に等価なのは次式であることを示せ:
(2.8.29)fμ=ecFμνuν
従って, ニュートンの運動方程式に相当する相対論的な式は次となる:
(8-3)md2zμdτ2=ecdzνdτFμν
この式は, 次式が成り立つことを必要(前提)とする(imply):[5][訳註] 式(2.8.30)は, 原書では次となっている: ddτ(dzμdτ)2=0 しかし, … Continue reading
(2.8.30)ddτu2=ddτ(uνuν)=0


〈解答例〉 ある慣性系 S に於いて速度 u で与えられた電磁場内を運動する荷電粒子 e に作用する力を決めることにする.通常の3元ベクトルでは式 (2.8.27) のローレンツ力になる:
(1)f=eE+ecv×B
これを踏まえて, この粒子が瞬間的に静止しているような慣性系 S0 を導入する.S0 系では, 荷電粒子に作用する通常の力 f は, 上式 (1) にv=0 を代入して次となる:
(2)f=eE
他方, S0 系での4元力 fμ は式 (2.8.29) に v=0β=v/c=0 を代入して次となる:
(3)fμ=(eEvc1β2,e1β2(E+1cv×B))=(0,eE)
以上のことを踏まえて, 問題文の式 (2.8.29) の4元量を考える.静止系 S に於ける粒子の4元速度は, 式 (2.8.16) で v=0 及び β=0 として次である:
(4)uμ=(c1β2,v1β2),uμ=(u0,u)=(c,0)
よって u0=c, uk=0 であるから, これを式 (2.8.29) の4元量に代入してみると,
(5)fμ=ecFμνuν=ec(Fμ0u0+Fμkuk)=ecu0Fμ0=eccFμ0=eFμ0
前節の結果式 (2.7.16) から, Fμ0
(6)F00=0,F01=ExF02=EyF03=Ez
であったから, これらを式 (5) に用いれば
(7)f0=eF00=0,f1=eF10=eEx,f2=eF20=eEy,f3=eF30=eEz
すなわち, 静止系 S に於ける粒子の4元力は
(8)fμ=(f0,f)=(0,eE)
以上の結果から, 式 (3) の4元力 fμ と式 (8) の静止系の4元力 fμ とは相等しいことが分かる.そして「2つの4元ベクトルがある座標系で成分が相等しいならば, それらは任意の座標系でも相等しい」はずである.よって, 任意の座標系で式 (2.8.30) が成り立つと言える:
(9)fμ=fμecFμνuν=fμ
以上は C.メラー:「相対性理論」 § 58 を参照した.
前述の式 (2.8.17) から u2=uνuν=c2 である.この両辺を固有時間 τ で微分すると, 右辺 c2 は定数なのでゼロとなる.よって,
(10)ddτ(uνuν)=duνdτuν+uνduνdτ=uνduνdτ+uνduνdτ=2uνduνdτ=0
この式(10)から
(11)uνduνdτ=0
である.この式 (11) と式 (8-1) から, 4元速度 uν と 4元力 fν とは互いに直交することが分かる:
fu=fνuν=uν(mduνdτ)=m(uνduνdτ)=0


通常の3次元的な力の表式は,
F=ddtp=ddt(mv1β2)
であった.これが式 (2.8.26) のローレンツ力である場合, 運動方程式は次となる:
(8-4)ddt(mv1β2)=eE+ecv×B
ラグランジュ方程式
(2.8.31)ddt(Luμ)Lxμ=0
を直接適用して運動方程式 (8-4) を導くには, ラグランジアンを
(8-5)L=mc21β2eϕ+ecAv,β=vc
とすればよいことを示すのは容易である.さらに, x に「共役な運動量PL/v であり, それは次で与えられる:
(2.8.32)P=Lv=mv1β2+ecA
これらに相当するハミルトニアンは
(8-6)H=eϕ+[c2(PecA)2+m2c4]1/2
これは次式を満たす:
(2.8.33)(Heϕc)2(PecA)2=m2c2
ハミルトニアンの考え方を「共変量」または「4次元の定式化」に変換するのは難しい.しかし,「作用 S は最小になるべきである」ことを述べた「最小作用の原理」:

S=LdtδS=δLdt=0

は運動方程式の相対論的な形を導出する.それは, 作用 S を次とするときである: [6][訳註] 原書では式 (2.8.34)(2.8.36) で α がなぜか時間 t の代わりに用いられている.よく分からないが, ここでは時間 t … Continue reading
S=Ldt=mcdsecAμdzμ(2.8.34)={mc(dzdtdzdt)1/2+ecAμdzμdt}dt
このとき, 定義から次であることに注意する:
(2.8.35)ds2=dzμdzμ(dsdt)2=dzμdtdzμdt
面白いことに, 次式で定義される別の「作用S も前述の S と同じ結果を導出する:
(2.8.36)S=m2(dzμdt)2dt+ecAμ(z)dzμdtdt


【 問題 】 (1) 式 (8-5) のラグランジアンは式 (8-4) の運動方程式を導出し, 相当するハミルトニアンは式 (8-6) であることを示せ.また, P に対する表式を見出せ.
(2) S がこの与えられた作用とするとき, S の変分 δS=0 は同じ方程式を導くことを示せ.


〈解答例〉 (1) ランダウの §2 と §16 を要約することで答えに代える.
与えられた電磁場中で運動する粒子に対する作用は2つの部分から成る.すなわち, 自由粒子の作用 Sm と, 粒子の場との相互作用を記述する項 S とから成っている.後者の S は, 粒子を特徴付ける量と場を特徴付ける量との両方を含むはずである.電磁場との相互作用に関する粒子の性質は, 粒子の持つ電荷 e で規定される.場の性質は 4元ポテンシャル Aμ によって特徴付けられる.これらの量は次の形の項として作用の中に現れる:
Sm=mcabds,ds=cdτ=cdt1β2,S=ecabAμ(x)dxμ,dxμ=(cdt,dx) Aμ=(ϕ,A)
ここで Aμ(x)dxμ=cϕdtAdx である.
従って, 電磁場中の荷電粒子に対する作用関数の形は次のように成る:
(16.1)S=Sm+S=mcabdsecabAμ(x)dxμ=mc2dtab1β2 ecab(ϕcdtAdx)(16.3)=ab{mc21β2eϕ+ecAdxdt}dt=abLdt
粒子の速度は v=dx/dt である.従って,「電磁場中の電荷のラグランジアン」は次である:
(16.4)L=mc21β2eϕ+ecAv,β=vc
ラグランジュ方程式」は次である:
(17.1)ddt(Lx˙)Lx=0,ddt(Lv)Lx=0
このとき,「一般化運動量」は,
(16.5)P=Lx˙=Lv=mv1β2+ecA=p+ecA
ただし p は「通常の(3次元の)運動量」である.また,

Lx=L=ecAveϕ

ここで, よく知られた次のベクトル解析の公式を用いる:
(ab)=(a)b+(b)a+a×rotb+b×rota

ただし a,b は任意の2つのベクトルである.この公式を Av に適用し,「x についての微分は v を一定にして行われる」ことに注意すれば,
Lx=ec(v)A+ecv×rotAeϕ

となる.従ってラグランジュ方程式は次となる:
(17.1-a)ddt(p+ecA)=dpdt+ecdAdt=ec(v)A+ecv×rotAeϕ
ところで, 微分 dA は時間 t と位置 x の関数と考えられるから, 次のように書ける:
dA=Atdt+Axdx=Atdt+(A)dx

従って,
dAdt=At+(A)dxdt=At+v(A)=At+(v)A

これを上式 (17.1-a) に用いると
dpdt+ecdAdt=dpdt+ec{At+(v)A}=dpdt+ecAt+ec(v)A=ec(v)A+ecv×rotAeϕ
従って, 次式が得られる:
(17.2)dpdt=ecAteϕ+ecv×rotA
さらに, 電場 E と磁場 B は次であった:
(17.4)E=1cAtϕ,B=rotA
これを上式 (17.2) に代入すれば,「電磁場中の電荷の運動方程式」として次が得られる:
(17.5)dpdt=eE+ecv×B
このときの右辺の表現は「ローレンツ力」と呼ばれる.
一般公式
H=vLvL

によって, ラグランジアンから「場中の粒子のハミルトニアン」を見出すことが出来る.式 (16.4) を代入すると, まず
Lv=mc2v(1v2c2)1/2+ecA=mv1β2+ecA

従って,
H=mvv1β2+ecAv+mc21β2ecAv+eϕ=mv21β2+mc21β2+eϕ(16.6)=mc21β2+eϕ
ところが, ハミルトニアンは「一般化運動量」に表さなければならない.式 (16.5) と (16.6) から, 場が無い (ϕ=0,A=0) とき
P=p,H=mc21β2=E

となるから,
E(=Heϕ)p(=PecA) の間の関係すなわち E2c2=p+m2c2 は, Hp との間の関係と同じであることが分かる.すなわち,
(16.7)E2c2=p+m2c2(Heϕc)2=(PecA)2+m2c2
これを書き直すと次となる:
(16.8)H=eϕ+m2c4+c2(PecA)2

(2) (ランダウの §2 から) 「最小作用の原理」は次の形に書ける:
(2.4)δS=δt1t2L(q,q˙,t)dt=0
あるいは「変分」を実行して,

t1t2(Lqδq+Lq˙δq˙)dt=0

δq˙=d(δqdt)=ddtδq を用い, 第2項を部分積分すると,
t1t2Lq˙δq˙dt=t1t2Lq˙(δq)˙dt=Lq˙|t1t2t1t2ddt(Lq˙)δqdt

従って, 次式を得る:
(2.5)δS=[Lq˙δq]t1t2+t1t2(LqddtLq˙)δqdt=0
端点では変分はゼロであるという条件 δq(t1)=δq(t2)=0 から第1項は消える.残った積分は, 任意に選ばれた δq に対してゼロでなけらばならない.このことは被積分関数が常にゼロである時にだけ可能である.このようにしてラグランジュ方程式が得られる:
ddtLq˙Lq=0

このラグランジュ方程式を解くと 運動方程式 (8-4) を導くことが出来るのであるから, 結局式 (2.4) の δS=0 も同じ運動方程式を導くのは明らかである.


References

References
1 [訳註] (ランダウ:「力学・場の力学」より) ポテンシャルの持つ任意性のため, 我々は常に付加条件をポテンシャルに課することが出来る.この理由のために, ここでは電磁波のポテンシャルをスカラー・ポテンシャルが方程式ϕ=0を満たすような具合に選ぶことにする.
2 [訳註] 前講から4元座標は X=(ct,X) であるから,
kX=kμXμ=(ωc,K)(ct,X)=ωtKX
3 [訳註] (ランダウ:「力学・場の理論」§35より) ある慣性基準系 K から速さ v で運動している時計(その慣性系を K とする) を観察する.微小時間 dt の間に運動している時計は距離 dr=dx2+dy2+dz2 だけ進む.従って v=dr/dt である.このとき運動している時計が刻む時間間隔 dτ を求めよう.座標系 K では時計は静止して見える.従って dx=dy=dz=0 である.世界間隔 ds の不変性から次が言える:
ds2=c2dt2dx2dy2dz2=ds=c2dτ2,dτ=dt1dx2+dy2+dz2c2dt2,andv2=dx2+dy2+dz2dt2=vx2+vy2+vz2,vx=dxdt, vy=dydt, vz=dzdtdτ=dsc=dt1v2c2dt=dτ1β2=γdτ,βvc
4 [訳註] (C.メラー §27 より) 粒子の運動量が変化していれば, 粒子は単位時間当たりの運動量の変化に等しい力 F の作用を受けているとする.即ち,
(24)F=dpdt
方程式 (24) は, 粒子の速度が小さいときには Newton の運動の第2法則に等しくなるが, この「方程式 (24) を相対論的領域に於ける力の定義を与える式」と見做すことにする.なぜなら, 粒子の運動量の変化を生じる原因である系の物理的状態に対する力 F の依存関係が与えられておれば, それを運動方程式と見做して差し支えないからである.
Newton 力学に於けると同様に, 単位時間当たりの力のする仕事 A は,
(25)A=Fu
によって定義する.ここで u は粒子の速度である.更に, 粒子の運動エネルギー E は,
(26)dEdt=A=Fu
によって定義される.この式は単位時間当たりの運動エネルギーの変化(Power)が, 仕事 A に等しいことを表している.4元力(Minkowskiの力) f を導入すれば, これらの式は次となる:
(42)dpdτ=f,dEdτ=fu
従って, 4元運動量 pμ=(E/c,p)=muμ を固有時間 τ で微分したものは, 質量 m を定数とすると次となる:
(55)dpμdτ=mduμdτ=(1cdEdτ,dpdτ)=(1cfu,f)fμ=(f0,f)1cdEdτ=f0=1cFu1β2,anddpdτ=f=F1β2
5 [訳註] 式(2.8.30)は, 原書では次となっている:
ddτ(dzμdτ)2=0
しかし, この式の書き方では紛らわしいと思われたため修正して表記した.
6 [訳註] 原書では式 (2.8.34)(2.8.36) で α がなぜか時間 t の代わりに用いられている.よく分からないが, ここでは時間 t を用いて表しておく.
式 (8-5) のラグランジアンに於いて「速度が小さい場合」には β=v/c1 として, 次のように近似することが出来る:
1β2=(1v2c2)1/2112v2c2

従って, ラグランジアンは次のように近似される:
L=mc21β2eϕ+ecAvmc2(112v2c2)eϕ+ecAv=mc2+12mv2eϕ+ecAv
さらに「ラグランジアンの決定には, 座標と時間の任意関数の時間についての完全導関数 f(q,t)を付け加えてよい」という任意性が残されていることに注意する:
L(q,q˙,t)=L(q,q˙,t)+ddtf(q,t)

そこで上述の Lf=mc2t を付加すると df/dt=mc2 であるから,
L=L+mc2=12mv2eϕ+ecAv

従って, このラグランジアン L に対する式 (2.8.36) の作用 S=Ldt も, 同じ運動方程式を導くと言える.