問題 7-5 の解答例

Feynman-Hibbs cover

Problem 7-5
The result in another way is

(7-33)δFδxkS=iFδSδxkS

which has the same content as Eq. (7-30).
It is better to write these relations as differentials,
(7-34)δFS=iFδSS

for then the specific variables on which F and S depend need not be indicated.
Argue that Eq. (7-34) may be misleading, for Eq. (7-33) applies only to rectangular coordinates. Do this by studying the corresponding relation where spherical coordinates, for example, are used and we wish to find FrkS.


( 解答 ) 前問解答の式 (1) と同様に考え, また題意により 3 次元の極座標で考えるならば,

FrkS=d3xkχ(xk)Frkψ(xk)=r2sinθdrdθdϕχ(xk)Frkψ(xk)(1)=02πdϕk0πsinθkdθk0χ(xk)Frkψ(xk)rk2drk

ここで r 積分だけを考え, 部分積分を行うと
0χ(xk)Frkψ(xk)rk2drk=|χ(xk)Fψ(xk)rk2|00χ(xk)Frkψ(xk)rk2drk=0χ(xk)Frkψ(xk)rk2drk=0χ(xk)F(ψ(xk)rkrk2+ψ(xk)rk2rk)drk(2)=0χ(xk)Fψ(xk)rkrk2drk0χ(xk)Fψ(xk)2rkdrk

ただし第 1 項は、r=0 のとき因子 r2=0 からゼロとなるし、r= のときは波動関数が無限遠では一般にゼロと考えるのでやはりゼロとなるため無視している.この結果を式 (1) に代入すると,
FrkS=02πdϕk0πsinθkdθk0χ(xk)Frkψ(xk)rk2drk=02πdϕk0πsinθkdθk0χ(xk)Fψ(xk)rkrk2drk02πdϕk0πsinθkdθk0χ(xk)Fψ(xk)2rkdrk=rk2sinθkdrkdθkdϕkχ(xk)Frkψ(xk)rk2sinθkdrkdθkdϕkχ(xk)F2rkψ(xk)(3)=d3xkχ(xk)Frkψ(xk)d3xkχ(xk)F2rkψ(xk)

これらの積分は, 前問の式 (4) と同様にして次に書ける:
d3xkχ(xk)Frkψ(xk)=dxbdxaDx(t)χ(xb)FrkeiS[xk]/ψ(xk)=iFSrkSd3xkχ(xk)F2rkψ(xk)=dxbdxaDx(t)χ(xb)F2rkeiS[xk/ψ(xk)(4)=F2rkS

従って,
(5)FrkS=iFSrkSF2rkS

よって, これを微分で表わすならば,
(6)δFS=iFδSSFδlogrk2S

これは式 (7-34) と比べて第 2 項だけ余分である.すなわち, 式 (7-34) の右辺は, 極座標での表現では異なった形になってしまうことが分かる!. よって,「式 (7-34) は, 使用する座標系ごとに適した形で表現する必要がある」ことに注意しなければならない.


( 参考 ) 遷移要素 FxkS の対角要素 (すなわち χ=ψ の場合) は,「状態が ψ である系に対して物理量 Fxk を観測したとき, この物理量を測定したときに得られる測定の期待値を表している」と言えよう. 参考のために, ディラック:「量子力学」の§ 17 からの抜粋と J.J. Sakurai :「現代の量子力学」からの抜粋を以下に示す.

抽象的な量を数で置き換えるやり方は一通りに決まっている訳ではなくて, 幾何学で用いる座標系が沢山あることに相当して, この場合も沢山のやり方が可能である.これらの沢山のやり方の一つ一つを「表示 (represntation )」と呼び, ある抽象的な量の代わりに用いられる数の組を, その抽象的な量の, この表示での「代表 (representative )」と呼ぶ.つまり抽象的な量の代表は, 幾何学の対象で言えばその「座標に相当するもの」である.量子力学で何か特定の問題を解決しようとする時には, この問題に現れる抽象的な量の内の重要なものが出来るだけ簡単な代表を持つような表示を用いれば, 労力が最も少なくて済む.
今基礎ベクトルが, 交換するオブザーバブル ξ1,ξ2,,ξu の完全な組の同時の固有ベクトルになっていると考えよう.α を勝手な1次演算子とし, 基礎ブラを一般に ξ1,,ξu| と書き, 基礎ケットを一般に |ξ1,,ξu と書いて,

(39)ξ1,,ξu|α|ξ1,,ξu

という数の組を作ってみる.これらの数を与えれば α を完全に定めるのに十分である.というのは, まず第一にこれらの数によって (そのケットの代表が与えられるのだから) ケット α|ξ1ξu が定められ, そして全ての基礎ケット |ξ1ξu に対してこのケットの値が分かれば α が定められるからである.式 (39) の表わす幾つかの数は1次演算子 α 或いは力学変数 α の「代表」と呼ばれる.これらの数は, 一つではなく二つの基礎ベクトルを示す目印のパラメータを含んでいるという点で, ケットベクトル或いはブラベクトルの代表よりももっと複雑である.

状態が |α であるときの A の期待値を次で定義する:

(1.4.5)Aα|A|α

上式は定義であるが, これは次のように書くことができるので「平均測定値」という直感的概念と一致する:
A=α|A|α=α|(a|aa|)A(a|aa|)|α=aaα|aa|A|aa|α=aaa|αaδaaa|α(1.4.6)=aa|a|α|2

内積 β|α を考察しよう.|x の完備性を用いると,
β|α=β|dx|xx||α=dxβ|xx|α(1.7.6)=dxψβ(x)ψα(x)

となるので, β|α は二つの波動関数の重なりを特徴付ける.しかし, β|α が重なり積分と定義しているのではないことに注意して欲しい.β|α は, 状態 |α が重なり積分と同じであると言うことは, |x の完備性の要請から帰結されるのである.更に一般的で表示に依らない解釈によれば,「β|α は状態 |α が状態 |β の中に見出される確率振幅を表わす」と言える.

ここで β|A|α が, |α|β の波動関数を使うとどのように表されるか調べよう.明らかに,
β|A|α=β|(dx|xx|)A(dx|xx|)|α=dxdxβ|xx|A|xx|α(1.7.10)=dxdxψβ(x)x|A|xψα(x)

である.従って, β|A|α の値を求めるには, 行列要素 x|A|x を知らなければならない.これは一般に 2変数 x 及び x の関数である.