問題 7-14 の解答例

Feynman-Hibbs cover

Problem 7-14
Show that the transition element of m(xk+1xkε)f(xk+1) is equivalent to that of (fp).
( 注意 ) 原書の問題文では「transition amplitude」となっている.しかし,ここは「transition element」であろうと思うので修正した.


 
( 解答 )  (m/ε)(xk+1xk) は, 式 (7-72) より時刻 tk に於ける運動量 pk である.また f(xk+1) は, 時刻 tk+1 に於けるオブザーバブルと考えられる.すると (m/ε)(xk+1xk)f(xk+1) は時間が連続した一連の量 pkf(xk+1) と見做せる.従って, 問題文の前に書かれている本文の規則から,「この量の遷移要素の積分的な定義は, それに相当する演算子 p^ 及び f^ を時間順序に従って右から左へ書いて行けば良い」.よって f^p^ となる:

(1)χ|mxk+1xkεf(xk+1)|ψ=χ(x,t)f^p^ψ(x,t)dx=χ|f^p^|ψ

この結論の式 (1) を, 式 (7-96) を導いた本文の記述と同じ手順でも求めて見よう.
式 (7-91) の F の代わりに F=(m/ε)(xk+1xk)f(xk+1) を用いる.この F の遷移要素は,
χ|m(xk+1xkε)f(xk+1)|ψ=mεχ|xk+1f(xk+1)|ψmεχ|xkf(xk+1)|ψ(1)=mεχ|f(xk+1)xk+1|ψmεχ|f(xk+1)xk|ψ

ただし xk+1f(xk+1) は交換可能, また, xkf(xk+1) も交換可能であると見做せることを利用して,「時間順に並び替えておく」ことに注意する.
式 (1) の右辺の各項を展開して行く.まず第 1 項は, x=xk+1 , y=xk , t=tk とすると,
mεχ|f(xk+1)xk+1|ψ=mεχ|(dxk+1|xk+1xk+1|)f(xk+1)xk+1(dxk|xkxk|)|ψ=mεdxk+1dxkχ|xk+1f(xk+1)xk+1xk+1|xkxk|ψ(2)=mεdxdyχ(x,t+ε)f(x)xK(x,t+ε;y,t)ψ(y,t)

ここで, 式 (3-42) を利用すると,
(3)dyK(x,t+ε;y,t)ψ(y,t)=ψ(x,t+ε)

また,
(4)χ(x,t+ε)χ(x,t)(1+iεH),ψ(x,t+ε)(1iεH)ψ(x,t)

と出来る.従って, 式 (2) は次となる:
mεχ|f(xk+1)xk+1|ψ=mεdxdyχ(x,t+ε)f(x)xK(x,t+ε;y,t)ψ(y,t)=mεdxχ(x,t+ε)f(x)xψ(x,t+ε)(5)=mεdxχ(x,t)(1iεH)f(x)x(1iεH)ψ(x,t)

次に第 2 項を展開すると,
mεχ|f(xk+1)xk|ψ=mεχ|(dxk+1|xk+1xk+1|)f(xk+1)(dxk|xkxk|)xk|ψ=mεdxk+1dxkχ|xk+1f(xk+1)xk+1|xkxkxk|ψ=mεdxk+1dxkχ(k+1)f(xk+1)K(k+1,k)xkψ(k)(6)=mεdxdyχ(x,t+ε)f(x)K(x,t+ε;y,t)yψ(y,t)

このとき g(y,t)yψ(y,t) とすると, 式 (3-42) を利用して次とすることが肝要である:
dyK(x,t+ε;y,t)yψ(y,t)=dyK(x,t+ε;y,t)g(y,t)=g(x,t+ε)(7)=(1iεH)xψ(x,t)

もしこれを次のように考えてしまうと, うまく結果を導くことが出来ないようなので注意する:
dyK(x,t+ε;y,t)yψ(y,t)=dyK(x,t+ε;y,t)g(y,t)=g(x,t+ε)=xψ(x,t+ε)=x(1iεH)ψ(x,t)

式 (7) を式 (6) に用いると,
mεχ|f(xk+1)xk|ψmεdxχ(x,t+ε)f(x)dyK(x,t+ε;y,t)yψ(y,t)(8)=mεdxχ(x,t)(1+iεH)f(x)(1iεH)xψ(x,t)

ψ(x)=ψ(x,t) 及び χ(x,t)=χ(x) と略記する.すると, 式 (1) は式 (5) と式 (8) から次となる:
mεχ|f(xk+1)xk+1|ψ=mε[dxχ(x)(1+iεH)f(x)x(1iεH)ψ(x)dxχ(x)(1+iεH)f(x)(1iεH)xψ(x)]mε[dxχ(x)f(x)xψ(x)+dxχ(x)f(x)x(iεH)ψ(x)+dxχ(x)(iεH)f(x)xψ(x)dxχ(x)f(x)xψ(x)dxχ(x)f(x)(iεH)xψ(x)dxχ(x)(iεH)f(x)xψ(x)]=mε(iε)[dxχf(x)xHψ(x)dxχ(x)f(x)Hxψ(x)](9)=dxχ(x)f(x)[im(HxxH)]ψ(x)

ここで, 式 (4-23) より HxxH=2mx, また, ix は運動量演算子 p^ であった.よって, 式 (9) は
(10)mεχ|f(xk+1)xk+1|ψ=dxχ(x)f(x)ixψ(x)=χ|f^(x)p^|ψ

すなわち (m/ε)(xk+1xk)f(xk+1) の遷移要素は f^(x)p^ の遷移要素に等価であることが示された.