問題 8-6 の解答例

Feynman-Hibbs cover

Problem 8-6
Show that the constants ajα are the same even if the coupling is not just to the nearest neighbors but extends with strengths λk to atoms k spaces away. Assuming λk falls rapidly enough for large k, find the values of the frequency ωα when such a coupling is present, i.e., when the potential energy, instead of being given by Eq. (8-66), is given by a similar equation, but one which contains the relative displacements of all pairs of atoms, each one multiplied by the appropriate λk, that is,

V=ν22jkλk(qk+jqj)2


( 解答 )  この問題に類似したものが, アシュクロフト・マーミン:「個体物理の基礎」第22章の演習問題1 に存在し, そこに示されている「分散関係」は次のようになっている:

(1)ω=2m>0KmMsin2mka2

まず, この場合の式 (8-67) に相当するラグランジアンは次となる:

(2)L=TV=j=1N12q˙j2ν22j=1Nk=1Mλk(qj+kqj)2

このとき, k の範囲は M 個までとしよう.ただし M<N/2 である.すると,
(3)pl=Lq˙l=q˙l(j=1N12q˙j2)=q˙l
また, ラグランジュの運動方程式から,
(4)ddtLq˙lLql=0p˙l=ddt(Lq˙l)=Lql
式 (3) と式 (4) とから,
p˙l=q¨l=Lql=ql{ν22jkλk(qj+kqj)2}=ν22jkλkql(qj+k22qj+kqj+qj2)(5)=ν22j=1Nk=1Mλk{2qj+kδj+k,l2qjδj+k,l2qj+kδj,l+2qjδj,l}
従って, 式 (8-68) に相当する式として次が得られる:
p˙l=q¨l=ν2kλkql+ν2kλkqlk+ν2kλkql+kν2kλkql=ν2kλk(qlkql)+ν2kλk(ql+kql)(6)q¨l=ν2kλk[(ql+kql)(qlqlk)]=ν2k=1Mλk(ql+k2ql+qlk)
すると, 式 (8-70) に相当する式は次となる:
(7)q¨j=ω2qj=ν2k=1Mλk(qj+k2qj+qjk)
この方程式 (7) の解は, 静止しているときの原子間隔を b として式 (8-71) を多少修正したものとしよう. すると, j 番目原子の平衡位置からの変位 qj は次となる:
(8)qj=Aei(Kbjωt)=AeiKbjeiωtajeiωtqj+k=Aei(Kbj+Kbkωt)=eiKbkqj,qjk=Aei(KbjKbkωt)=eiKbkqj
式 (8) を式 (7) に代入すると, ω2qj=ν2k=1Mλl(qj+k2qj+qjk)=ν2kλk(eiKbkqj2qj+eiKbkqj)=ν2qjkλk(eiKbk2+eiKbk) 従って, ω が満たすべき式として次が得られる:
(9)ω2=ν2kλk(eiKbk2+eiKbk)=4ν2k=1Mλksin2(Kbk2),(10)ω=2ν|k=1Mλksin2(Kbk2)|1/2
この分散関係の概略 (ただしλ1=1,λ2=1/2,λ3=1/4 とした場合) を図示すると次の図 1 のようになる.また, アシュクロフト・マーミンの第24章に「中性子散乱によって測定したアルミニウムのフォノン分散関係」の図 24.2 があったので参考のために示しておく(図 2):
disparsion_relation

図 1. M 番目まで隣接相互作用がある 1 次元鎖の分散関係.ただしλ1=1,λ2=0.5,λ3=0.25


real_disparsion

図 2. 中性子散乱によって測定したアルミニウムのフォノン分散関係 (アシュクロフト・マーミン:「個体物理の基礎」による).

この式 (10) は, 以下のように置き換えるならば, アシュクロフト・マーミンに与えられている式 (1) に相当したものになっている!:

km,Kk,ba,ν2λkKmM

更に, ここでは周期的境界条件: qj+N=qj から, 式 (9) の K の値は K=2πα/Nb だけが許される.従って, ωα についての式は,
(11)ωα2=4ν2k=1Mλksin2(bk22παNb)=4ν2k=1Mλksin2(πkNα)

よって, 式 (10) は次のように書くことが出来る:
(12)ωα=2ν|k=1Mλksin2(πkNα)|1/2,whereα=0,1,2,,(N1)

更に, このときの振動数 ωα に対する j 番目座標の振幅 ajα は, 式 (8-74) と同じ形で書けることに注意する:
(13)ajα=AeiKbj=Aexp(i2παNbbj)=Aexp(i2πNjα)