多数の同種粒子から成る系を扱う場合, その系の状態を表わすのに “色々な一粒子状態を占めている粒子の数 ” で表現する「数量表示」を用い, その粒子数の変化は “消滅演算子” や “生成演算子” で表現するやり方がある.また, 多粒子系を三次元空間の中で起こる量子化された波として扱う「場の量子論」では,「第2量子化」が行われる.この「第2量子化」という概念がちょっと分かりづらく感じた.色々と書物を探していたら, 朝永著「スピンはめぐる」の第 6 話に分かり易い説明があるのを見つけたので, その部分を要約し(単に要点を順に抜き出しただけ), また式を表にまとめておく.
粒子1個から成る系について
(1) 1個の粒子に対するSchrödinger方程式は,
(2)
このとき
エネルギーの期待値
(3) 展開係数
(4) 展開係数
粒子1個の力学系 個の「アンサンブル」について
(1) オブザーバブル
ここで
すると, 正準方程式は次に書ける:
(2) ディラックは「
(3) しかし,「粒子
A. 「配位空間中の波動関数 」で, ボソン 個の系を考えた場合
(4) 「相互作用の無い粒子
であるが, 系は「粒子の交換について対称的」とするならば, このハミルトニアン
B. 「3次元実空間中の波動場 」で, ボソン 個の系を考えた場合
(5) ハミルトニアン (6-9′), 運動方程式 (6-10′), 交換関係 (6-14),
-数の波動関数 とそれに共役な運動量 を定義する:
「この は『3次元実空間の波動場』と見做すことが出来る」. と の交換関係を課す.
- この波動場
に対する運動方程式:
- ハミルトニアン:
- (6-12′) の関係は次となる:
【 粒子1個の系 】 | 【 多粒子系 (粒子 N 個の系) 】 |
(1) Schrödinger方程式 |
(1) Schrödinger方程式 |
(2) オブザーバブル |
(2) オブザーバブル 固有値が |
(3) エネルギーの期待値 |
(3) エネルギーの期待値 |
(4) 展開係数 |
(4) 展開係数 |
多粒子系に於いて粒子間の相互作用が無視される場合
(1) 多粒子系の式 (6-1′)は1個の粒子に対する式 (6-1) と同じ形をしており, またハミルトニアン (6-5′) も粒子1個のエネルギー期待値 (6-5) と同じ形をしている.しかし, 形は同じでも
(2) 式 (6-14′) は ボソンの個数
このようにして「波動関数
そして「波動場の運動方程式」(6-1′) と「配位空間の波動関数の運動方程式」(6-15) とは同等であると見倣せる!.
(6) 空間内に実在する電気密度
【 配位空間での波動関数 |
【 3次元空間での波動場 |
(1) Schrödinger方程式 |
(1) Schrödinger方程式 |
(2) 展開係数 |
(2) 波動場 |
相互作用しているボソン粒子の「実アンサンブル」の場合
(1) 「相互作用している粒子」がボソンであると,「3次元空間に実在する波動場
(2) 多粒子系の場の方程式 (6-1′) に於けるハミルトニアンは,
もし粒子間に相互作用, 例えばクーロン斥力が存在するならば,
すなわちハミルトニアンは,
(3) 場の方程式は式 (6-1′)の代わりに, 次を用いる:
(4) この場の方程式 (6-22) は
(5) この理論は, 次のハミルトニアンを持ったボソン系の量子論とあらゆる点で一致した答えを持つことになった:
ただし
(6) 結局,「量子化すべき方程式は場の方程式であって, 確率振幅の式ではない!」.従って, 確率振幅の方程式が分からなくても, 場の方程式が分かっているならば, それを量子化すればよい.
(7) ハイゼンベルグとパウリは, 電磁場だけでなく, 電子それ自身も量子化された場と考えて, それらの相互作用を論じた.そのとき,「ディラック方程式を電子の確率振幅に対する方程式とは考えずに, 電子場に対する相対論的な『場の方程式』と見做した」.
(8) すると「確率振幅の式としては不適切だ」とディラックによって拒否されたクライン-ゴルドン方程式も一つの可能な相対論的な場の方程式として採用してもよいことになった.