問題 9-1 の解答例

Feynman-Hibbs cover

Problem 9-1
Show that E,B, and k are muturally perpendicular for this plane-wave solution A(r,t)=ak(t)eikr.


解答する前に, この問題に関連した本文の式 (9-12) について言及しておく.原典では, 式 (9-12) について次のように述べている: If we expand A in running plane waves, that is,

(9-12)A(R,t)=ak(t)eikR

しかし, ここは校訂版のように修正するべきであろう: If we assume A is a running plane wave, that is,
校訂版の訳本では, この部分が原典のまま訳されているので注意しよう.

( 解答 )  ここの解答は, 砂川:「理論電磁気学」の § 8-2 の記述を, この本に合わせたものである.
本文で前述された式: a¨k(t)=c2k2ak(t) から ak(t) は, ω=ck として次とすることが出来る:

(1)ak(t)=e(1)akeiωt

ただし e(1) は, 波動の偏りの方向を示す単位ベクトルである.この結果と式 (9-12): A(r,t)=ak(t)eikr, そして e(3) を波数ベクトル k の方向(すなわち波動の進行方向)の単位ベクトルとすると, ベクトルポテンシャルは次に書ける:
(2)A(r,t)=ak(t)eikr=e(1)akei(krωt),whereω=c|k|,k=e(3)k

これは波動方程式の1つの解で k の方向に進行する平面波を表している [1]【 参考 】 単色平面波について, ランダウ:「力学・場の理論」の§ 70 の一部を抜粋し, 以下に示しておこう. § 70. … Continue readingak=|ak| は波動の振幅であり, ω は角振動数である.式 (9-13): kak=0 から, この波動 A の偏りの方向 e(1) は, 波動の進行方向 k に直角になっていなくてはならない.
 式 (2) を, 式 (9-8):A=0 に代入すると,
(3)divA(r,t)=rA(r,t)=e(1)(ik)akei(krωt)=ie(1)kakei(krωt)=0

これが任意の r,t に於いて成立するためには, 波動の進行方向 k の単位ベクトルを e(3) とするならば,
(4)e(1)k=ke(1)e(3)=0e(1)e(3)=0

すなわち, 波動の偏り e(1) は波動の進行方向 e(3) に直角になっていなくてはならない.
 さらに, 式 (3) を時間微分すると, 式 (9-11) を用いて次となる:
(9-11)E=1cAt,2A1c22At2=0,(5)tdivA(r,t)=tA=(At)=c(1cAt)=cE=0

すなわち divE=0 となり, A についての式 (2) と全く同じ議論から, 電場 E もやはり波動の進行方向 e(3) に直角な成分だけを持つことになる.その電場 E は, 式 (9-11) に式 (2) を代入して得られ, 電場 E の偏りは e(1) 方向であることが分かる:
(6)E(x,t)=1cAt=1cte(1)akei(krωt)=e(1)iωcakei(krωt)

 次に磁場も式 (9-7):B=×A から求まる.例えば x -成分を示すと,
B(x,t)x=(rotA)x=AzyAyz=y{ez(1)akei(krωt)}z{ey(1)akei(krωt)}(7)=i(kyek(1)kzey(1))xakei(krωt)=(k×e(1))xiakei(krωt)

となり, 他の成分も同様である.従って, 磁場は次で与えられることが分かる:
(7)B(x,t)=(k×e(1))iakei(krωt)=e(2)ikakei(krωt),(9)wheree(2)=kk×e(1)=e(3)×e(1)

このとき磁場の方向を表わす単位ベクトル e(2) は, 電場の方向ベクトル e(1) と進行方向の単位ベクトル e(3) の両方に直交する単位ベクトルである.
 以上から, 電波 E と磁波 B は進行方向 k に直角な偏りを持ち, かつそれらはまた互いに直交していることが分かる(下図を参照すべし).
偏極ベクトル

図 1. 平面電磁波の偏りと偏極ベクトル e(i)

References

References
1 【 参考 】 単色平面波について, ランダウ:「力学・場の理論」の§ 70 の一部を抜粋し, 以下に示しておこう.

§ 70. 単色平面波

電磁波の特別な場合として非常に重要なのは, 場が時間の単一周期の関数であるような波である.このような波は「単色」と呼ばれる.単色波に於けるあらゆる量(ポテンシャル, 場の成分)は, cos(ωt+α) という形の因子を通じて時間に関係する.量 ω は波の「角振動数」と呼ばれる.(x-軸に沿って伝播する)平面波では, 場は tx/c だけの関数である.従って, もし平面波が単色であれば, その場は tx/c の単一周期の関数である.このような波のベクトルポテンシャルは, 複素数の表式の実数部分として書くことが最も便利である:

(70.1)A=Re{A0eiω(tx/c)}

ここで A0 は, ある定数の複素ベクトルである.明らかにこのような波の場 E 及び H は, 同じ振動数 ω の同様な形を持ち, 次に書ける:
(69.3)E=1cAt=1cA,H=×A=(txc)×A=1cn×A

ただし, ダッシュは tx/c についての微分を表わし, n は波の伝播方向の単位ベクトルである.第1の式を第2の式に代入して次式が得られる:
(69.4)H=n×E

次の量
(70.2)λ=2πcω

は「波長」と呼ばれる:それは固定した時刻 t に於ける座標 x についての場の変化の周期である.次のベクトル
(70.3)k=ωcn

は,「波数ベクトル」と呼ばれる(ただし n は波の伝播方向の単位ベクトル).これを使うと, 式 (70.1) を座標軸の選び方に依らない形
(70.4)A=Re{A0ei(krωt)}

に書くことが出来る.指数に於ける i のかかった量は,「波の位相」と呼ばれる.線形の演算だけをこれらの量に対して行なう限りでは, 実数部分をとるという記号を落として, 複素数の量自体について演算を行なうことが出来る.そうすると A=A0ei(krωt) を式 (69.3) に代入して, 平面単色波の場の強さとベクトルポテンシャルとの間の関係を,
(70.5)E=ikA,H=ik×A

という形に求められる.