Feynman QED Second Lecture

Second Lecture

量子電気力学の法則(Laws of Quantum electrodynamics)

現時点では, 正当化(弁明)することなく「量子電気力学の法則」を次のように述べておこう:

  1. 原子系がある状態から別の状態に遷移する過程で光子を「吸収する」振幅と, 同じ遷移が光子を表わす古典的電磁波の静電誘導と等価なポテンシャルの影響下で行われるときの振幅とは「厳密に」等しい.ただし次を仮定する:
    • (a) 古典的な波は, 光子を見つける 1cm3 当たりの確率の ω 倍に等しいエネルギー密度を表すように規格化されている.
    • (b) 実際の古典的な波は2つの複素波 eiωte+iωt に分割され eiωt 部分のみが保持される.
    • (c) ポテンシャルは摂動中に一度だけ働く, つまり電磁場の強さが一次の項のみが保持されるべきである.
  2. ある偏光の 1 立方センチメートルあたりに利用できる状態の数は,
    d3K(2π)3 である.これは古典論に於ける 1 立方センチメートル当たりの通常モードの数と全く同じであることに注意してほしい.
  3. 光子はボーズ-アインシュタイン統計に従う.つまり同一の光子の集合体の状態は(光子を交換する, 振幅を増やすとき) 対称でなければならない.また, n 個の同一光子からなる状態の統計的な重みは古典的な n! ではなく 1 である.従って一般に, 適切に規格化されれば光子は古典的なマクスウェル方程式の解で表現される.

多くの表現形式が可能であるが, 電磁場を平面波で記述するのが最も便利である.平面波は, 常にベクトルポテンシャル A だけで表現できる (スカラーポテンシャル ϕ はゲージ変換でゼロにする).実際の古典波を表わすベクトルポテンシャル A は次のように表される:

(2.1)A=aecos(ωtKx)

A の規格化を, 光子を見出す確率が1立方センチメートル当たり1となるようにしたい.従って, エネルギー密度の平均は ω となるべきである.
すると, [1] [訳註] 原書にはマイナス符号が抜けているので注意する.
(2.2)E=1cAt=ωacesin(ωtKx)

そして,
(2.3)|B|=|E|

従って, エネルギー密度の平均は次に等しい:
18π|E|2+|B|2=18π2|E|2=14πω2a2c2sin2(ωtKx)(2.4)=14πω2a2c2×12=18πω2a2c2

これが ω に等しいとおけば a が分かる:
(2.5)18πω2a2c2=ωa=8πc2ω

よって,
A=8πc2ωecos(ωtKx)=4πc22ωe{exp[i(ωtKx)]}+{exp[+i(ωtKx)]}
従って, 1つの原子系が1個の光子を吸収する確率振幅は次とする: [2]従って, 下記の Example や, 後の Third Lecture で A=aeexp{i(ωtKx)} とするときの a は式 (2.5) の値でなく, この式から  … Continue reading
(2.6)4πc22ωexp[i(ωtKx)]

放出の場合,ベクトルポテンシャルは正の指数になる以外は同じである.

Example : 1個の原子がエネルギー Ei の励起状態 ψi にあり, 遷移してエネルギーが Ef の終状態 ψf となると仮定する.1秒当たりの遷移確率は, 放出された光子を表現するベクトルポテンシャル aeexp[+i(ωtKx)] の影響下での遷移確率と同じである.量子力学の法則 (フェルミの黄金律) によると, [3]【 訳註 】 [J.J.Sakuraiより] フェルミの黄金則は, 単位時間当たりの遷移確率を wi[n] … Continue reading

Trans.prob.sec=2π|f(potential)i|2(density of states)(2.7)Density of states=K2dKdΩ(2π)3d(ω)=ω2dΩ(2πc)3

行列要素 Ufi=|f(potential)i|2 は摂動理論から計算される.それのより詳しい解説は次の講義で行う.しかしながら, まずは,「1個以上のポテンシャルを選択しても同じ物理結果を与えることが出来る」ことを記しておく.(これは, 我々の光子に対して常に ϕ=0 としてよいことを正当化するものである).

References

References
1 [訳註] 原書にはマイナス符号が抜けているので注意する.
2 従って, 下記の Example や, 後の Third Lecture で A=aeexp{i(ωtKx)} とするときの a は式 (2.5) の値でなく, この式から a=4πc22ω とする.
3 【 訳註 】 [J.J.Sakuraiより] フェルミの黄金則は, 単位時間当たりの遷移確率を wi[n] として次式に書ける:
(5.6.34)wi[n]=2π|Vni|2ρ(En)EnEi

ただし (E,E+dE) のエネルギー間隔にある状態数が dN=ρ(E)dE になるように定義する.更に, 一辺 L の立方体箱中で波動関数 ψ(x)=eikx/L3 が周期的境界条件を満たして規格化されているとすると, 波数ベクトル k=(kx,ky,kz)ni を非負整数として次を満たす:
kx=2πLnx,ky=2πLny,kz=2πLnz,n2=nx2+ny2+nz2,k2=kx2+ky2+kz2=(2πL)2n2kdk=(2πL)2ndn
L のときには連続変数と見做せる n は, 格子空間中で原点から引いたベクトルの長さと考えられ, そのベクトルの先が nn+dn 間の立体角 dΩ 中に在るような微小体積要素(すなわち状態数) dV=dN を考えると, 前式を用いて次が言える:
dN=ρ(E)dE=dV=dndS=n2dndΩ=(L2π)3k2dkdΩρ(E)dE=(L2π)3k2dkdΩ

更に k=ωcE=ω を用いると dk=dωc, dE=d(ω)=dω であり, また L=1 とすると,
ρ(E)dE=ρ(E)dω=(L2π)3k2dkdΩ=(L2π)3ω2c2dωcdΩ,ρ(E)=(L2π)3ω2c3dΩ=ω2(2πc)3dΩ