式 (8-106) 及び式 (8-107)の導出



問題 (8-7) に解答する準備も兼ねて, 本文の式 (8-106) と式 (8-107) の導出を書いておく.

◎ 導出の準備として

まずは,「フーリエ変換」について, H.P.スウ著「フーリエ解析」の § 4.5 以降から抜粋してまとめておく.

【 A 】 如何なる関数も, 時間領域 f(t) と周波数領域 F(ω) に対応する2つのモード表現を持つことが出来る.
f(t)F(ω) とは互いに次のような「フーリエ変換」の関係にある:

(1){F(ω)=f(t)eiωtdtf(t)=12πF(ω)eiωtdω

【 B 】 F[f(t)]=F(ω) とし, t±f(t)0 とすると, 次が成り立つ:
(2)F[f(t)]=iωF(ω)=iωF[f(t)]

【 C 】 f1(t) 及び f2(t) を2つの与えられた関数とする.次の式で定義さえる量 f(t) を, f1(t)f2(t)
畳込み」( convolution ) と言う:
(3)f(t)=f1(t)f2(t)f1(x)f2(tx)dx

【 D 】 畳込みについて, 次の「周波数畳み込み定理」( frequency convolution theorem ) が成り立つ:
F1[F1(ω)]=f1(t) 及び F1[F2(ω)]=f2(t) とすると,
(4)F1[F1(ω)F2(ω)]=2πf1(t)f2(t)(5)or,F[f1(t)f2(t)]=12πF1(ω)F2(ω)=12πF1(y)F2(ωy)dy

【 E 】 上の定理を用いると次が言える:
関数 f1(t) 及び f2(t)実数関数とし, F[f1(t)]=F1(ω) 及び F[f1(t)]=F2(ω) とすると,
F(ω)=F(ω) が言えて, 次式が成り立つ:
(6)f1(t)f2(t)dt=12πF1(ω)F2(ω)dω=12πF1(ω)F2(ω)dω

◎ 以上の事柄を基に, 式 (8-106) を考える.

まず式 (8-85) から, U(k,t)u(x,t) とは互いに「フーリエ変換」の関係にある:

(7)F[u(x,t)]=U(k,t){U(k,t)=0Lu(x,t)eikxdxu(x,t)=12πU(k,t)eikxdk

フーリエ変換 (7) は x についての変換であるから, u(x) の時間微分 u˙(x,t) のフーリエ変換は, 式 (7) の両辺を時間微分することで得られる:
(8)F[u˙(x,t)]=U˙(k,t){Ut=0Luteikxdxut=12πUteikxdk

また (B) からは次が言える:
(9)F[u(x)]=F[ux]=ikU(k,t)

以上のこと 及び uj(x) が実数関数であることから, 式 (6) により次が言える:
(ut)(ut)dx=12π(U(k,t)t)(U(k,t)t)dk=[U(k,t)t]2dk2π,(ux)(ux)dx=12πikU(k,t)×{ikU(k,t)}dk=k2U2(k,t)dk2π
この2式から, 式 (8-105) のフーリエ変換として式 (8-106) が得られることが分かる:
L=ρ2(ut)2dxρc22(ux)2dxFρ2dk2π[U(k,t)t]2ρc22dk2πk2U2(k,t)

◎ また, J.J.Sakurai :「Advanced Quantum Mechanics」 の§ 1-2 より

ラグランジアンが式 (8-105) のように L=Ldx の形で表されるとき, L に対する「オイラー=ラグランジュ方程式」は次である:
(10)xL(u/x)+tL(u/t)Lu=0
この場合の L は,

(11)L=ρ2(ut)2ρc22(ux)2

すると,
L(u/x)=ρc22×2(ux)=ρc2ux,L(u/t)=ρ2×2ut=ρut,Lu=0
これらをオイラー=ラグランジュ方程式 (10) に代入すると, 式 (8-107) となる:
x(ρc2ux)+t(ρut)=0ρ2ut2+ρc22ux2=0(8.107)