問題 9-3 の解答例

Feynman-Hibbs cover

Problem 9-3
Prove that the relation ϕk=4πρk/k2 simply means that ϕk at any instant is the Coulomb potential from the charges at that instant, so that, for example, if ρ comes from a number of charges ei at distances ri from a point, the potential at the point is ϕ=iei/ri. This is just the content of Eq. (9-10).


( 解答 )  関係式 ϕk=4πρk/k2 は, 本文の式 (9-10), 式 (9-14) そして問題 9-2 の結果式 (9-15) から求めることが出来る:

(9-10)2ϕ=4πρ(9-14)ϕ(r,t)=d3k(2π)3ϕk(t)eikr,ρ(r,t)=d3k(2π)3ρk(t)eikr,(9-15)ρk(t)=eeikq(t)

まず, 式 (9-14) の ϕ を2回作用させると,
ϕ=d3k(2π)3ϕk(t)(eikr)=d3k(2π)3ϕk(t)ikeikr,(1)2ϕ=d3k(2π)3(ik)2ϕk(t)eikr

他方, 式 (9-10) と式 (9-14) より,
(2)2ϕ=4πρ=4πd3k(2π)3ρk(t)eikr=d3k(2π)3(4π)ρk(t)eikr

従って, 式 (1) と式 (2) との比較により,
(3)(ik)2ϕk(t)=4πρk(t),ϕk(t)=4πρk(t)k2=4πρk(t)k2

これ以降の解答は, 砂川:「理論電磁気学」の§ 4-1 の記述を, この本文の表現に合わせたものである [1]砂川では MKSA 単位系を用いている.これを真空に於いて, C.G.S.Gauss 単位系に換算するには ε01/4π とし, μ04π/c とすればよい.
静止物体中の Maxwell 方程式の Lorentz ゲージに於ける基本方程式系で, 特に電磁場と電流電荷の分布が「時間的に変動しないとき」, 即ち「静的な場合」の式は次となる:
(4)E(x)=gradϕ(x),2ϕ(x)=4πρ(x)(5)B(x)=rotA(x),2A(x)=4πcj(x),divA(x)=0

無限に拡がっている真空あるいは等質誘電体の中に時間的に変動しない電荷分布 ρ(x) が与えれれているとき, 式 (4) すなわち式 (9-10) のポアソン方程式の特解を求めることによって, 静電ポテンシャルを決定する.そのために, まず次式で与えられる方程式の特解 G(x) を求めておくと便利である.
(6)2G(x)=δ3(x)=4πδ3(x)4π

この式の物理的意味は,「点電荷 ρ(x)=δ3(x)/4π が原点にあったとき, それの作る静電ポテンシャル G(x) を求める」ということである.もしこの G(x) が分かるならば, 一般の電荷分布 ρ(x) が与えれたときの静電ポテンシャル ϕ(x) は次に書くことが出来る:
(7)ϕ(x)=4πG(xx)ρ(x)d3x,orϕ(x)=4πiρ(xi)G(xxi)

なぜならば, この ϕ(x) のラプラシアンをとると, 確かに式 (4) のポアソン方程式を満たし, その特解となっているからである:
2ϕ(x)=4π2G(xx)ρ(x)d3x=4πδ3(xx)ρ(x)d3x(8)=4πρ(x)

このとき, 次が言えることに注意する:
(9)ρ(x)2G(xx)d3x=ρ(x)δ3(xx)d3x
式 (6) を解くには, G(x) を次のようにフーリエ積分で書いておくと便利である:
(10)G(x)=d3k(2π)3G(k)eikx,G(xq)=d3k(2π)3G(k)eik(xq)

デルタ関数のフーリエ積分は次に書かれる:
(11)δ3(x)=1(2π)3eikxd3k,δ3(xq)=d3k(2π)3eik(xq)

式 (9) に式 (10) の G(xx) と式 (11) の δ3(xx) を代入し, 両辺を比較することで次の代数方程式が得られる:
ρ(x)2(d3k(2π)3G(k)eik(xx))d3x=d3xρ(x)d3k(2π)3G(k)2eik(xx)=d3xρ(x)d3k(2π)3G(k)(ik)2eik(xx),ρ(x)(d3k(2π)3eik(xx))d3x=d3xρ(x)d3k(2π)3(1)eik(xx),(12)(ik)2G(k)=1G(k)=1k2

このとき G(k) を求めるときに割り算をするときにちょっと注意が必要である.詳しい事柄は J.D.Jacksonの § 1.7 を参照すべし.今は心配は要らない.この結果を式 (10) に代入すると,
(13)G(x)=d3k(2π)31k2eikr=1(2π)3eikrk2d3k

この積分を極座標を用いて実行すると, 結果として次が得られる:
(14)G(x)=14π1|x|

これを式 (7) に代入し,「電荷密度 ρ は, ポテンシャルを考えている点 x から距離 ri にある多くの点電荷 ei に由来する」ならば, ρ(xi)=ei そして |xxi|=ri であるから,
ϕ(x)=4π14π1|xx|ρ(x)d3x=ρ(x)|xx|d3x,(15)orϕ(x)=4πiρ(xi)14π1|xxi|=iρ(xi)|xxi|=iei ri 

これが式 (4) すなわち式 (9-10) のポアソン方程式の特解であるが, 式 (4) の電荷分布 ρ(x) は時間的に変動しないと仮定したのであった.従って, 式 (15) の ϕ(x) は, 電荷分布 ρ(x) によるその瞬間での「クーロンポテンシャル」である.このクーロンポテンシャルは, その電荷が存在すると瞬時に生起するものである [2]それに対して, もし電磁場と電流電荷の分布が時間変化する場合には, 式 (4) … Continue reading

References

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1 砂川では MKSA 単位系を用いている.これを真空に於いて, C.G.S.Gauss 単位系に換算するには ε01/4π とし, μ04π/c とすればよい.
2 それに対して, もし電磁場と電流電荷の分布が時間変化する場合には, 式 (4) のポアソン方程式は真空に於いて次のような式となる:
(16)2ϕ1c2ϕt=4πρ,2A1c2At=4πcj

この場合, この方程式の解, 例えばスカラーポテンシャル ϕ(x,t) は次のような「遅延ポテンシャル」(retarded potential) となる:
(17)ϕ(x,t)=[ρ(x,t)]ret|xx|d3x

この式中の []ret は, 時刻 t は遅延時刻 t=t|xx|/c で評価すべきことを意味している.詳細は例えば, J.D.Jacksonの § 6.4 または砂川の § 9.1 を見よ.