前の「自己エネルギー」に関連して「Lambシフト」の解説が J.J.Sakurai に書かれているので, それを引き続き記事として示しておく.
Dirac 理論によると, 水素原子の
http://www.physics.umd.edu/grt/taj/624a/Bethe1947.pdf
.J.J.Sakuraiは §2.8 で引き続き, この Bethe の論文に従って「Lambシフト」の計算方法を教科書的に丁寧に解説している.
Bethe の Lamb シフトの論じ方(Bethe’s treatment of the Lamb shift)
H.A.Bethe は, 精密な準位シフト測定が戦時中のマイクロ波技術開発によって可能となったことに刺激されて, 図2-7(b) に示した相互作用による水素原子のエネルギーシフトを計算する際に K.Kramers の「質量繰り込み」の考え方を応用した.式 (2.243) と式 (2.247) から, または式 (2.252) から次式が得られる(これらの図や式については前のブログ記事を見よ):
ただし, 上式中では次の式変形を利用している:
そして
これが成り立つことは, 次の 3 ステップによって証明される.まず最初に, 無摂動ハミルトニアン
2番目に, 式 (2.256) の状態
3番目は, 左から
その結果式は実数のはずであるから, 右辺量はその複素共役と等しいはずである:
よって,
となり, 式 (2.255) が得られる.水素原子の場合
また, 原子の波動関数は
ただし,
すると
ただし
シュレディンガー理論では, 水素原子のエネルギー準位は主量子数
Bethe は Lamb と Retherford の観測を説明するために式 (2.262) を導き出した.
§ 4-7 で述べるが, その後の相対論的な計算により, この分離値は完全に収束した値となっている [7]この理由は V. F. Weisskopf が最初に示したように, … Continue reading.理論値
References
↑1 | H.Bethe の1947年の論文は次のサイトから閲覧することが出来る: http://www.physics.umd.edu/grt/taj/624a/Bethe1947.pdf |
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↑2 | [訳註] 電磁気学の公式から, この2つの式から電場 水素原子の電荷密度は |
↑3 | [訳註] L.Pauling & E.Wilson:Quantum Mechanics の § 21a の表 21-4 によれば, 水素様原子の波動関数は |
↑4 | [訳註] (ランダウ:「量子力学」§31より) クーロン場に関連した計算を行うときには, 全ての量を測るのに,「原子単位」と呼ばれる特別な単位を用いると便利である.すなわち質量, 長さおよび時間を測る単位として, それぞれ次のものを選ぶ: ただし となる.Ry |
↑5 | [訳註] 水素原子の基底状態は |
↑6 | ラムシフトの大きさを理解するためには, 基底状態のイオン化エネルギー |
↑7 | この理由は V. F. Weisskopf が最初に示したように, 相対論的な取り扱いでは自由電子または束縛電子の自己エネルギーが対数的にしか発散しないからである.乱暴に言えば, 式 (2.253) の2つの線形に発散する式の差は対数的にしか発散しないのと同じように, 相対論的アプローチで現れる 2 つの対数的に発散する式の差は有限であることが分かる. |
↑8 | R.T.Robiscoe による最近の「Lambシフト」は |