問題 6-22 の解答例

Feynman&Hibbs 裏表紙

Problem 6-22
In Prob. 6-21 we have V12=V21, so that V12 is real. Show that even if V12 is complex, the physical results are the same ( let v=|V12| ).


(解答) 前のブログ記事で述べた「時間依存する2準位問題」がこの問題に相当しているので,その結果を用いて検討することにしよう.すると今度は V11=V22=0,V12=veiωt,V21=veiωt とし, 初期条件: c1(0)=1,c2(0)=0 として, 次の連立方程式を解けばよい:

iddtc1(t)=V11c1(t)+V12eiω12tc2(t)=vei(ωω12)tc2(t)(1)iddtc2(t)=V21eiω21tc1(t)+V22c2(t)=vei(ωω21)tc1(t)

ただし ω21=(E2E1)/=ω21 である.第2式を更に時間微分したものに第1式を代入することで, 次のような c2 について2次の定数係数の線形同次方程式が得られる:
(2)d2c2dt2+i(ωω21)dc2dt+a2c2=0,a=v

これを初期条件 c2(0)=0,c˙2(0)=ia で解けばよく, その解は次となる:
(3)c2(t)=2i(v/)ei(ωω21)t/2(ωω21)2+4(v/)2sin((ωω21)2+4(v/)22t)

同様にして c1(t) の場合は, 次のような微分方程式が得られる:
(4)d2c1dt2i(ωω21)dc1dt+a2c1=0,a=v

これを初期条件 c1(0)=1,c˙1(0)=0 で解けばよく, その解は次となる:
c1(t)=ei(ωω21)t/2cos((ωω21)2+4(v/)22t)(5)iei(ωω21)t/2(ωω12)(ωω21)2+4(v/)2sin((ωω21)2+4(v/)22t)

問題 6-21 と同様に, 二つの準位は縮退していて E1=E2 とする.また前述したブログにあるようにポテンシャルの角振動数 ω が2準位系を特徴付ける角振動数 ω21 とほぼ等しいという「共鳴条件」が成り立っている場合を考えると,
(6)ωω21=E2E1=0,ωω21=0

これを式(3)と式(5)に当てはめる.すると式(3)より時刻 T 後に於ける振幅 c2(T) は,
(7)c2(T)2iv/2v/sin(2v/2T)=isin(vT)

同様にして, 式(5)より時刻 T 後に於ける振幅 c1(T) は,
(8)c1(T)cos(2v/2T)=cos(vT)

これらの結果は, 問題 6-21 解答で示した式 (7.a) と式 (7.b) と全く同じである.従って「摂動ポテンシャル V12 が複素数であっても物理的結果すなわち遷移確率は同じである」と言える.