単位(UNITS)
これ以降では, 次の慣習を用いる [1][訳註] ただしこの訳では
表 9-1 は, よく用いる単位に対する慣習の便利な参考資料である.
電子の質量 | |||
エネルギー | 510.99 keV | ||
運動量 | |||
振動数 | |||
波数 | |||
長さ(コンプトン波長 |
|||
時間 | |||
微細構造定数(無次元) | |||
電子の古典半径 | |||
ボーア半径 |
以下の数値は有用である:
- Mass unit of atomic weights
MeV Mass of hydrogen atom mass units Mass of neutron keV- kT
eV when T= K Avogadro’s number coulombs
KLEIN-GORDON方程式, PAULI方程式, DIRAC方程式
相対論的力学では, ハミルトニアンは次式で与えられる:
もし
すると
ただし演算子の2乗は, 通常の演算子代数によって求めれる(evaluate) ものとする.相対論的に可能な式として, 最初にこの式を発見したのはシュレディンガーである.通常この式は「クライン-ゴルドン方程式」と言われている.相対論的な表式は,
従って, 式 (9-2) の相対論的な表式は次となる:
この方程式は「スピン」を考慮しないため, 水素スペクトルの微細構造を記述できない.そこで今は, スピンを持たない粒子である
従って,
次に
右辺の項を左辺の第1項と比較して無視すると, 通常のシュレディンガー方程式となる:
【 問題 】 Klein-Gordon方程式に対して,
としよう.すると
〈解答例〉 まず, 式 (9-2′) の左辺を展開して見ると,
ただし
ただし
このとき, 式 (1) と式 (2) の右辺は一致するので, 式 (1) の左辺は実の量であることに注意する.
以上を準備として
ここで
最初の [ ] 内の量は式 (1) の左辺に一致しており, また 2 番目の [ ] 内は式 (2) の左辺に一致しているので,
従って, 4元的な連続の方程式が成り立つことが示された:
前述されているように「2つの4元ベクトルのスカラー積は不変量である」.上式では
クライン-ゴルドン方程式が最初に明るみに出た当時, この方程式を否定する有効な根拠と考えられたほど不合理な結果を導出した.その結果とは, 負のエネルギー状態の可能性である.クライン-ゴルドン方程式が, そのようなエネルギー状態を予言することを理解するために, 自由粒子の方程式を考えて見よう.それは式 (9-2′) に於いて
ただし
4元ベクトル表記に於いて, この方程式は次の解を持つ:
ここで,
であるから, このときのエネルギー
【 問題 】 解
〈解答例〉 式 (9-2) の両辺に
仮定より
式 (2) を式 (1) に当てはめると,
式 (3) に解
これらを代入すると,
次に解
を式 (5) に代入して,
ここで式 (5) に於いて
すなわち,
この式に於いて
ディラック方程式のオリジナルな求め方の代わりに, ここでは別のアプローチでそれを求めてみよう.クライン-ゴルドン方程式は, 実はシュレーディンガー方程式の4元ベクトル形式である.同様の観点から, ディラック方程式はパウリ方程式の4元ベクトル形式として求めることが出来る.そのような手順に従うと, 相対論的方程式には「スピン」に関連する項が含まれることになる.スピンの考え方はパウリによって初めて導入されたが, 電子の磁気モーメントを
従って, シュレディンガー方程式は,
であり, そしてクライン-ゴルドン方程式は式 (9-2) である:
さて今度は「パウリ方程式」だが, その場合も
従って, シュレディンガー方程式に現れる
しかしこれは実際は正しくない.しかしこれに非常に似た式, つまり
これはディラック方程式の一形式である.
演算子が作用する波動関数
ディラックによって最初に提案された形により近いものは以下のようにして得ることが出来る.便宜のために次のように書くことにする:
そして次は関数
すると式 (9-5) は, 次式を含意している:
なぜなら, 式 (9-5) は式 (a) と式 (b) によって表せるからである:
この対式は, 次のように書くことによって書き直すことが出来る (特定の慣用式になるだけだが):
その次に
これらの2式は, 特定な慣習を適用することで一つに書くことが出来る.新たな行列の波動関数を次で定義する:
この時
その次に, 次の捕捉的な定義を行う:
[註] 後者の定義の例は次となる:
(9-6)は,次の形に書くことが出来る:
なぜなら,
これは, 実際は4つの波動関数についての4つの方程式である.すると4元ベクトルを用いることで, ディラック方程式は次となる:
【 問題 】 次が成り立つこと,
すなわち, 次となることを示せ:
〈解答例〉 まず
ただし Pauli行列
この Pauli行列
ただし
この Pauli行列の性質を用いて
ただし
ディラック方程式の同様な形は, クライン-ゴルドン方程式との比較による別の議論からも得ることが出来るであろう.そこで
Pauli方程式 (9-4) と似た表記だが
この式 (9-11) を, 式 (9-9) と比較すべきである.
さて, 式 (9-4) の Pauli方程式とシュレディンガー方程式との違いは3次元のスカラー積である
は必然的に式 (9-9) と等価である.なぜなら, 式 (9-9) の両辺に
【 問題 】 式 (9-11) は, 次式と等価であることを示せ:
〈 解答例 〉 式 (9-11) はゲージ共変微分
すなわち次式のように表せる:
この左辺の量
この第1項のダミー指標の単なる書き換え
これを式 (2) に利用すると,
さらに
従って式 (4) は,
よって式 (9-11) すなわち式 (1) は, この式 (6) を用いることで,
すなわち題意の式となる:
ちなみに, この式を通常の単位を用いて書くと,
また,
従って, 次式となる (ランダウ:「相対論的量子力学」の §32 を参照のこと):
〈 別解 〉 この問題の解答に該当した内容が, メシア:「量子力学 3」の第 20 章 § 21 にあるので, その説明を問題に合うように修正して記しておく.
式 (9-11) は,「ゲージ共変微分」
ここで
また, ダミー指標の単なる書き換えと
さらに
以上の式
ここで「スピンを表す量
すると式 (12) は,
従って, 式 (9-11) すなわち式 (8) は次のように表すことが出来る:
この式をクライン-ゴルドン方程式:
という項が現れることである.これは粒子のスピンと電磁場との間の相互作用を表す項である.この項は古典的類似物がなく, この項の寄与は古典近似が成り立つ条件の下では無視できる.このときディラック波束の運動はクライン-ゴルドン波束の運動と同じである.
References
↑1 | [訳註] ただしこの訳では |
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↑2 | [訳註] 原書での式は次となっている: しかし, これでは 「ゲージ共変微分」については, 例えば Mark S. Swanson, Path Integrals and Quantum Processes § 7.1 を参照のこと.また, クライン-ゴルドン方程式などについては, 次の文献に詳しい説明があるので参照すべし: H.Feshbach and F.Villars, Rev. Mod. Phys., |