多くの教科書で,『4元ベクトルには共変成分と反変成分の2種類がある』と習う.例えば, ランダウ:「力学・場の理論」§ 38 では次のようである:
全ての4元ベクトル
の大きさの2乗 は, 動径4元ベクトル の2乗 と同様に次で定義される:
この種の表式を書くのに便利なように, 4元ベクトルの「2種類」の成分を導入し, 添字を上あるいは下側に付けた記号及び でそれらを表そう.そうして
とする.量は4元ベクトルの「反変成分」, は「共変成分」と呼ばれる.
しかし「この2種類の成分はどのように違うのか」を直観的に理解することは難しいであろう.その違いを斜交座標の場合に図示した説明が, 例えば 高橋康:「場の解析力学入門」や藤井保憲:「時空と重力」に載っている.ここでは藤井の§ 11 の説明を取り上げる.ただし, その文章は斜交座標が直交座標に対して
斜交座標
線素と計量テンソル
直交座標でない座標系の中で最も簡単なものは「斜交座標」である.例えば2次元の直交座標
直交座標系の
このとき
次に無限小線素を考える.座標
で与えられるが, これを斜交座標で表わしてみる.点
となるので, これを上式 (11-6) に代入すると
上式の各項の係数
直交座標系の場合の計量を特にバーを付けて書くことにすると, それは「単位行列」
ただし
これは一般の斜交座標でも成り立つ重要な関係式である.
ベクトルの成分
直交座標系では, ベクトル
同じことが斜交座標系でも成り立つであろうか?.上式に倣って成分を次式によって定義してみる:
その幾何学的な意味は, 下図 3 から明らかであろう.
そこで前式 (11-17) を上式 (11-18) に代入してみると
このとき式 (11-3,4) から
これを前式 (11-19) に代入すると,
この関係式の幾何学的意味も 図 3 に示してある.ところが, このような成分
まず式 (11-12) の計量テンソル
ただし
この
という量を作ってみると,
これに式 (11-21) の
これの幾何学的な意味は図 4 に示しておく.今度は式 (11-17) と類似した関係式として
という型にまとめられる.
このように斜交座標系では「ベクトルの成分に2種類のものを考えなくてはならない」.添字が下にある