ランダウの「4元速度の定義」が違っている!

ランダウ:場の古典論の表紙
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ランダウ=リフシッツ:「場の古典論」及び「力学・場の理論」に書かれている「4元速度 \(u^{\,\mu}\)」の定義は,「時空座標 \(x^{\,\mu}\) を世界間隔 \(s\) で微分する形」の式

\begin{equation}
u^{\,\mu} = \frac{dx^{\,\mu}}{ds},\qquad ds=cdt
\tag{1}
\end{equation}

になっている.しかしこれは, 数学(微分幾何またはリーマン幾何)における「曲線の方向ベクトル」の定義であって, 物理的には不適切であろう.なぜなら, 式 (1) では \(u^{\,\mu}\) が次元の無い定義になってしまうからである.パウリやジャクソンなどの教科書では「時空座標 \(x^{\,\mu}\) を固有時間 \(\tau\) で微分する形」で定義している.実際, パウリは §22 の中で,「また今まで用いて来た式 (1) の代わりに, 質点の「速度を示すベクトル」として
\begin{equation}
u^{\,\mu} = \frac{dx^{\,\mu}}{d\tau}
\tag{2}
\end{equation}

を用いる」と書いている.
以上の事柄を示すために, まずは「4元速度」の理解及び他の教科書の定義の例として, 内山龍雄:「相対性理論」§ 14 の文章を示し, その後でランダウの「場の古典論」§7の文章の抜粋を示しておく.

以下は内山龍雄:「相対性理論」から —

14 相対論的運動学

2つの慣性系 \(S\) と \(S’\) が Galilei 変換で結ばれるとすれば, Newton のカ学の法則は両系で, 全く同じ形式に書きあらわされる.これに反して \(S\) と \(S’\) とが Lorentz 変換で結ばれるとすれば, Maxwell の電磁場の法則は, いずれの系からみても同じ形式に書きあらわされるが, Newton の法則はそのままでは, \(S\) と \(S’\) で同じ形式になることは不可能である.つまり Newton の法則は Lorentz 変換に対して不変でない.そこでこれから Newton の法則を少し修正して, それが Lorentz 変換に対して不変となるようにしよう.
そのために, まず質点の運動学の相対論的修正を考えよう.Newton の力学では質点の運動は, 質点の空間的位置 \(x^{k}\) \((k= 1,2,3)\) を時間 \(t\) の関数で書きあらわすことにより表現される.しかし相対論の立場からみれば, この表現法は時間と空間を同格に扱わないという点で不適当である.できれば, Lorentz 変換に対して不変なパラメーター \(\lambda\) を適当にみつけて, 質点の4次元座標 \(x^{\,\mu}\) \((\mu=0,1,2,3)\) を \(\lambda\) の関数として表現することが望ましい.このようなパラメーターとして最適なものは, 質点の描く世界線の4次元的道のり(世界間隔)である.質点が, 世界点 \(x^{\,\mu}\) から \(x^{\,\mu} + \Delta x^{\,\mu}\) まで移動した場合, 両点のあいだの「4次元的不変距離の2乗」 \(\Delta s^2\) は,
\begin{align*}
\def\mb#1{\mathbf{#1}}
\def\ds#1{\mbox{${\displaystyle\strut #1}$}}
&x^{\,\mu}=\bigl(x^{\,0},\ x^{\,1},\ x^{\,2},\ x^{\,3}\bigr)=\bigl(ct,\ x,\ y,\ z\bigr)\quad\rightarrow\quad
\Delta x^{\,\mu}=\bigl(c\Delta t,\ \Delta x,\ \Delta y,\ \Delta z\bigr),\\
\mathrm{therefore}\quad &\Delta s^2 = \eta_{\mu\nu}\,\Delta x^{\,\mu}\Delta x^{\,\nu}
= c^2 (\Delta t)^2 -(\Delta x)^2 -(\Delta y)^2 -(\Delta z)^2
= c^2 (\Delta t)^2 -(\Delta \mb{x})^2
\end{align*}
で与えられる.従って, これを \(\Delta s^2=c^2(\Delta \tau)^2\) と書き直す.つまり Lorentz 変換に対して不変な実数のパラメーター \(\tau\) の増加量 \(\Delta \tau\) は,

\begin{equation}
c^2(\Delta \tau)^2 \equiv \eta_{\mu\nu}\,\Delta x^{\,\mu}\Delta x^{\,\nu}
\tag{14.1}
\end{equation}

で与えられる [1][ブログ註] ここでは, ランダウに合わせて計量テンソルが \(\eta^{\,\mu\nu}=(1,\,-1,\,-1,\,-1)\) の場合の式に表現を変更しているので注意する.内山では, … Continue reading.これからは式 (14.1) で定義されたパラメーター \(\tau\) を \(\lambda\) の代りに用い, 質点の「4次元的位置」は \(x^{\,\mu}\) で与えられると考える.式 (14.1) は次のような分かり易い形に書き換えられる: [2][ブログ註] 式 (14.1) を,「2点が互いに無限に接近している場合」に書くならば, 世界間隔 \(ds\) はその普遍性から次となる: \begin{equation*} ds^2=c^2 dt^2 … Continue reading
\begin{equation}
\Delta \tau = \Delta t \sqrt{\ds{1-\left(\frac{\mb{v}}{c}\right)^2}}\quad\rightarrow\quad
\frac{d t}{d\tau} = \frac{1}{\sqrt{\ds{1-\left(\frac{v}{c}\right)^2}}}=\frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}},\quad \beta=\frac{v}{c}
\tag{14.1-a}
\end{equation}

\(\mb{v}=d\mb{x}/dt\) は質点の3次元的速度である.
この \(\tau\) は質点の「固有時間」( proper-time )と呼ばれる.その理由を説明しよう.式 (14.1) の定義から分かるように \(\tau\) は Lorentz 不変な量(すなわちスカラー)である.そこで特に, 或る瞬間に, この質点と同じ速度で走っている座標系 \(S’\) からこの質点を眺めたとしよう.質点の座標を \(x^{\,\mu}(\tau)\) とすれば, 質点は瞬間 \(\tau\) には静止して見えるから, その位置 \(\mb{x}’\) は時間が経っても変わらないので,
\begin{align*}
&x’^{\,k}(\tau)=x’^{\,k}(\tau+\Delta\tau)\quad\rightarrow\quad
\Delta x’^{\,k}(\tau)=0 \qquad k=1,2,3,\\
&x’^{\,0}(\tau+\Delta \tau)-x’^{\,0}(\tau)=\Delta x’^{\,0}=c\Delta t’ \neq 0
\end{align*}
となる.従って,
\begin{equation*}
c^2(\Delta \tau)^2 =\eta_{\mu\nu}\,\Delta x^{\,\mu}\Delta x^{\,\nu}
=\eta_{\mu\nu}\,\Delta x’^{\,\mu}\Delta x’^{\,\nu} =(\Delta x’^{\,0})^2= c^2 (\Delta t’)^2
\end{equation*}

つまり \(\Delta \tau = \Delta t’\) である.従って, 質点と一緒に運動している時計の示す時間 \(t’\) は \(\tau\) と同じものである.もっと端的に言えば, 各々の質点に結びつけた時計の読みがその質点の \(\tau\) である.この故に \(\tau\) をその質点の「固有時間」または「固有時」という.
\(\tau\) はスカラー(Lorentz 不変)であるから, 質点の位置 \(x^{\,\mu}\) の変化率
\begin{equation}
u^{\,\mu} \equiv \frac{d x^{\,\mu}}{d\tau}
\tag{14.2}
\end{equation}

は \(x^{\,\mu}\) と同じ変換性をもち, したがって「反変ベクトル」である.これを質点の「4元速度」( four-velocity )と言う.いま \(S’\) 系の座標原点に固定されている質点を考えよう.この \(S’,\, S\) 系から見た座標は \(x’^{\,\mu}(\tau)=(x’^{\,0},\mb{x}’\equiv 0)\), \(x^{\,\mu}(\tau)\) である.これらは Lorentz 変換
\begin{equation*}
x’^{\,\mu}=a^{\mu}_{\ \nu}\,x^{\,\nu},\quad\mathrm{or}\quad x^{\,\nu}=b^{\nu}_{\ \mu}\,x’^{\,\nu} = b^{\nu}_{\ 0}\,x’^{\,0}
\end{equation*}

により結ばれているとする [3][ブログ註] \(S’\) 系から見た質点は静止しているから, 質点の位置は時間が経過してもずっと変わらない.よって時間 \(\tau\) の位置 … Continue reading.上の第2の式を質点の固有時間 \(\tau\) で微分すれば, \(\Delta t’=\Delta\tau\) より
\begin{equation}
u^{\,\nu} =\frac{dx^{\,\nu}}{d\tau}= b^{\nu}_{\ 0}\,\frac{c\,dt’}{d\tau}=c\,b^{\nu}_{\ 0}
\tag{14.3}
\end{equation}

となる.従って \(b^{\nu}_{\ 0}\) は反変ベクトル \(u^{\,\nu}/c\) に等しい.
式 (14.1-a) を用いれば, \(u^{\,\mu}\) と3次元速度 \(\mb{v}\) の関係は次のようになる:
\begin{align}
&u^{\,\mu}=\frac{dx^{\,\mu}}{d\tau}=\frac{dx^{\,\mu}}{dt}\cdot\frac{dt}{d\tau},\qquad
\frac{dt}{d\tau}=\frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}},\quad \beta=\left|\frac{\mb{v}}{c}\right|, \notag\\
\rightarrow\quad u^{\,k}&=\frac{dx^{\,k}}{dt}\cdot\frac{dt}{d\tau}=\frac{v^k}{\sqrt{1-\beta^2}}\qquad
k=1,2,3\notag\\
u^{\,0} &=\frac{dx^{\,0}}{dt}\cdot\frac{dt}{d\tau}=\frac{cdt}{dt}\cdot\frac{dt}{d\tau}= \frac{c}{\sqrt{1-\beta^{2}}}
\tag{14.4}
\end{align}

なお, 式 (14.4) からは
\begin{align}
u\cdot u &=u^{\,\mu}u_{\mu}=\left(\frac{c}{\sqrt{1-\beta^{2}}},\,\frac{\mb{v}}{\sqrt{1-\beta^{2}}}\right)\cdot
\left(\frac{c}{\sqrt{1-\beta^{2}}},\,\frac{-\mb{v}}{\sqrt{1-\beta^{2}}}\right)\notag\\
&=\frac{c^2}{1-\beta^2}+\frac{-\mb{v}\cdot\mb{v}}{1-\beta^2}=\frac{c^2-v^2}{1-\beta^2}
=\frac{c^2(1-v^2/c^2)}{1-\beta^2}= c^{2},\notag\\
\mathrm{therefore}\quad u\cdot u &=u^{\,\mu}u_{\mu}=c^2
\tag{14.5}
\end{align}

が導かれる.これは式 (14.1) を \((\Delta\tau)^2\) で割算しても導くことが出来る.
\(u^{\,\mu}\) が反変ベクトルであるということを利用すると, 当然のことながら,「3次元速度の合成則」を導くことが出来る.いま記号を少し変更して, 質点を \(S,\, S’\) 系から見たとき, その3次元速度 (ただし簡単のため \(x\) 軸に平行とする) を \(w,w’\) とする.また変換 \(S\to S’\) は特殊 Lorentz 変換であるとする.\(u^{\,1}\) を \(u’^{\,1}\), \(u’^{\,0}\) で表わすと [4][ブログ註] 特殊ローレンツ変換の逆変換は, \begin{align*} &x=\frac{x’+vt’}{\sqrt{1-\beta^2}}=\gamma(x’+vt’),\quad y=y’,\quad z=z’,\quad … Continue reading
\begin{equation*}
u^{\,1}=\frac{u’^{\,1}+\beta u’^{\,0}}{\sqrt{1-\beta^2}},\qquad \beta=\frac{v}{c}
\end{equation*}

また \(u\) と \(w\), そして \(u’\) と \(w’\) の間には, 式 (14.4) により
\begin{equation*}
u’^{\,1} = \frac{w’}{\sqrt{1-(w’/c)^2}},\qquad u’^{\,0}= \frac{c}{\sqrt{1-(w’/c)^2}},\quad
u^{\,1}= \frac{w}{\sqrt{1-(w/c)^2}}
\end{equation*}

という関係がある.これら4個の式から \(u,u’\) を消去すると
\begin{equation*}
w=\frac{w’+v}{\ds{1+\frac{w’v}{c^2}}}
\end{equation*}

が導かれる.これは式 (14.12) [5][ブログ註] (内山§4より) \(S’\) 系から見たとき1個の質点が \begin{equation} x’=x'(t’),\quad y’=y'(t’),\quad … Continue reading で \(u_y=u’_y=0\), \(u_z=u’_z=0\), さらに \(u_x\), \(u’_x\) をそれぞれ \(w\), \(w’\) とした場合に相当する.

以下はランダウ=リフシッツ:「場の古典論」から —

§ 7 4元速度の定義式

通常の3次元の速度ベクトルから4次元ベクトルをつくることができる.粒子の4次元的な速度(4元速度)とは, ベクトル

\begin{equation}
u^{i}=\frac{dx^{i}}{ds}
\tag{7.1}
\end{equation}

である.
これらの成分を見いだすために, (3.1) によれば
\begin{equation*}
d\tau=\frac{ds}{c}=dt\sqrt{\ds{1-\frac{v^2}{c^2}}}\quad\rightarrow\quad ds=cdt\sqrt{\ds{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}
\end{equation*}

あることに注意する.ただし, \(v\) は粒子の通常の3次元的な速度である.こうして
\begin{equation*}
u^{1}=\frac{dx^{1}}{ds}=\frac{dx}{\ds{cdt\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}}=\frac{dx}{dt}\frac{1}{\ds{c\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}}
=\frac{v_x}{\ds{c\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}}
\end{equation*}

等々.結局
\begin{equation}
u^{i}=\left(\frac{1}{\ds{c\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}},
\frac{v_x}{\ds{c\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}}\right)
\tag{7.2}
\end{equation}

が得られる.4元速度はディメンションなしの量であることを注意しよう
4元速度の成分は独立でない.\(dx_i dx^i=ds^2\) であることに注意すれば
\begin{equation}
u^{i}u_i=1
\tag{7.3}
\end{equation}

である.幾何学的にいえば,「\(u^i\) は粒子の世界線に接する単位4元べクトルである」ということになる

References

References
1 [ブログ註] ここでは, ランダウに合わせて計量テンソルが \(\eta^{\,\mu\nu}=(1,\,-1,\,-1,\,-1)\) の場合の式に表現を変更しているので注意する.内山では, 計量テンソルを \(\eta^{\,\mu\nu}=(-1,\,1,\,1,\,1)\) としているために4元的不変量の2乗を
\begin{equation*}
\Delta s^2 = \eta_{\mu\nu}\,\Delta x^{\,\mu}\Delta x^{\,\nu}
= (\Delta x)^2 +(\Delta y)^2 +(\Delta z)^2-c^2 (\Delta t)^2
= -c^2 (\Delta t)^2+(\Delta \mb{x})^2
\end{equation*}

としている.従って, 内山では次のような文章が続いている:
「しかし質点の3次元的速度 \(\mb{v}=\Delta\mb{x}/\Delta t\) の大きさは常に \(c\) より小さいために, 反変ベクトル \(\Delta x^{\,\mu}\) は必ず時間的ベクトルとなる.つまり上に与えた \(\Delta s^2\) は必ず負となる.そこで, 混乱をさけるために \(\Delta s^2 = -c^2(\Delta \tau)^2\) と書き直す」.
しかし, 計量テンソルを変更したのでこれはカットした.
2 [ブログ註] 式 (14.1) を,「2点が互いに無限に接近している場合」に書くならば, 世界間隔 \(ds\) はその普遍性から次となる:
\begin{equation*}
ds^2=c^2 dt^2 -dx^2 -dy^2 – dz^2 = c^2 d\tau^2 \quad\rightarrow\quad
d\tau= \frac{ds}{c}=dt\sqrt{\ds{1-\frac{1}{c^2}\frac{dx^2 + dy^2 + dz^2}{dt^2}}}
\end{equation*}

しかるに,
\begin{equation*}
\frac{dx^2 + dy^2 + dz^2}{dt^2}=v^2
\end{equation*}

は, 動いている系 \(S’\) の速度の2乗である.従って,
\begin{equation*}
d\tau = \frac{ds}{c}=dt\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}
\end{equation*}
3 [ブログ註] \(S’\) 系から見た質点は静止しているから, 質点の位置は時間が経過してもずっと変わらない.よって時間 \(\tau\) の位置 \(x’^{\,k}(\tau)\) と時間が\(\Delta \tau\) だけ経過した位置 \(x’^{\,k}(\tau+\Delta\tau)\) は等しい.また, 最初に質点が \(S’\) 系の座標原点にあるならば, ずっと原点に居るように見えるから, \(\mb{x}'(\tau)=0\) または \((x’^1,x’^2,x’^3)=(0,0,0)\) である.従って,
\begin{equation*}
x^{\,\nu}=b^{\,\nu}_{\mu}\,x’^{\,\nu} =b^{\,\nu}_{0}\,x’^{\,0}+b^{\,\nu}_{1}\,x’^{\,1}+b^{\,\nu}_{2}\,x’^{\,2}+b^{\,\nu}_{3}\,x’^{\,3}
= b^{\,\nu}_{0}\,x’^{\,0}
\end{equation*}
4 [ブログ註] 特殊ローレンツ変換の逆変換は,
\begin{align*}
&x=\frac{x’+vt’}{\sqrt{1-\beta^2}}=\gamma(x’+vt’),\quad y=y’,\quad z=z’,\quad t=\frac{t’+(v/c^2)x’}{\sqrt{1-\beta^2}}=\gamma(t’+\beta c x’),\\
&\quad \mathrm{where}\quad \gamma=\frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}},\quad \beta=\frac{v}{c}
\end{align*}
この第1式の両辺を固有時間 \(\tau\) で微分すると,
\begin{align*}
\frac{dx}{d\tau}=u^{1} &=\gamma\left(\frac{dx’}{d\tau}+v\frac{dt’}{d\tau}\right)=\gamma\left(u’^{\,1}+\frac{v}{c}\frac{cdt’}{d\tau}\right)=\gamma\left(u’^{\,1} + \beta\frac{dx’^{\,0}}{d\tau}\right)\\
&=\gamma\bigl(u’^{\,1} + \beta u’^{\,0}\bigr)=\frac{u’^{\,1} + \beta u’^{\,0}}{\sqrt{1-\beta^2}}
\end{align*}
5 [ブログ註] (内山§4より) \(S’\) 系から見たとき1個の質点が
\begin{equation}
x’=x'(t’),\quad y’=y'(t’),\quad z’=z'(t’)
\tag{4.11}
\end{equation}

という運動をしているとしよう.この質点の \(S’\) から見た速度は
\begin{equation*}
u’_x = \frac{dx'(t’)}{dt’}=u’\cos\theta’,\quad u’_y=\frac{dy'(t’)}{dt’},\quad u’_z = \frac{dz'(t’)}{dt’},\quad \mathrm{where}\quad u’=\sqrt{(u’_x)^2 +(u’_y)^2 +(u’_z)^2}
\end{equation*}

である.この運動を \(S\) 系から眺めたときは
\begin{equation*}
u_x = \frac{dx(t)}{dt’}=u\cos\theta,\quad u_y=\frac{dy(t)}{dt},\quad u_z = \frac{dz(t)}{dt},\quad \mathrm{where}\quad u=\sqrt{(u_x)^2 +(u_y)^2 +(u_z)^2}
\end{equation*}

とする.両者の関係を調べてみよう.特殊ローレンツ変換の逆は次である:
\begin{equation}
t=\frac{t-(v/c^2)x’}{\sqrt{1-\beta^2}},\quad x=\frac{x’+vt’}{\sqrt{1-\beta^2}},\quad y=y’,\quad z=z’
\tag{3.6-a}
\end{equation}

そこで, 上の第1の式で第2,3,4 の式を割り算すれば次となる:
\begin{equation}
u_x=\frac{u’_x+v}{1+(u’_x v/c^2)},\quad u_y=\frac{u’_y\sqrt{1-\beta^2}}{1+(u’_x v/c^2)},\quad u_z=\frac{u’_z\sqrt{1-\beta^2}}{1+(u’_x v/c^2)}
\tag{4.12}
\end{equation}

また \(u\) は次となる:
\begin{equation}
u=\frac{\sqrt{u’^{2}+v^{2}+2u’v\cos\theta’-(u’v\sin\theta’/c)^{2}}}{1+(u’v\cos\theta’/c^{2})}
\tag{4.13}
\end{equation}

式 (4.12) で \(u_y=u’_y=0\), \(u_z=u’_z=0\), さらに \(u_x\), \(u’_x\) をそれぞれ \(w\), \(w’\) とすると
\begin{equation}
w=\frac{w’+v}{1+(w’ v/c^2)},\quad u_y=0,\quad u_z=0
\tag{4.12-a}
\end{equation}